変化する環境と日本の援助政策 〜二つの政府開発援助大綱の策定から〜

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本稿は二つのODA大綱(1992、2003年)の策定に影響を及ぼした要因と日本政府の対応を検証した。政府の援助基本方針である両大綱が策定されたのは、冷戦の終結あるいは米国の一極支配の揺らぎと多極化といった国際秩序の転換期に重なる。いずれも日本の国際的な地位と日本への関心が変化し、ODAについて従前のあり方が厳しく問われた時代であった。両大綱のテキスト自体は、各時代の国際開発援助レジームへの整合性を担保しつつ、独自性を発揮する努力が反映されている。他方でそれらが主に標的とした読者は、むしろ国内の利害関係者であった。1992大綱はODAに対して理念や規律を求める世論・メディアへの対応であり、また野党の政治介入を回避し行政の裁量を確保することが企図された。2003改定大綱は、長期の経済停滞を一因とするODAに対する消極的な世論の下、狭義の国益追求とODA政策に説明責任や透明性を求めるという、多様化し場合によっては対立する利害に対応しようとしたものである。

著者
渡邉 松男
発行年月
2019年3月
ページ
30ページ
開発課題
  • #日本の開発協力
研究領域
開発協力戦略
研究プロジェクト