日本の環境援助の史的展開: 日本の環境援助はなぜ有効性と競争優位が低下したのか?

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本稿は、日本の環境援助のマクロでの有効性、及び受取国にとっての受容性や当事者意識の確保における他ドナーとの間での競争力が、気候変動援助の主流化とモジュラー型イノベーションへのシフト、新興ドナーの出現等の外的環境の変化によってどのように変化したのか、そしてなぜ変化したのかを、支援内容とそのモダリティの2つの観点から解明することを目的とした。分析の結果、下記の4点を明らかにした。第1に、環境援助の初期には、受取国の関心が高かった都市環境対策や産業公害対策に日本のみが多額の資金と技術的解決法、及び対策経験を供給していたことが、他の供与国と比較した際の日本の環境援助の競争優位の源泉となっていた。第2に、その支援は高い環境改善効果が期待されたものの、必ずしも費用効率性の高いものではなかった。第3に、外部環境の変化による支援内容とモダリティに対するニーズの変化に日本の環境援助とその技術的解決法の主な供給者である日本企業は十分に対応できなかった。第4に、この結果、日本の環境援助の有効性と競争優位は低下した。

著者
森 晶寿
発行年月
2019年7月
ページ
23ページ
開発課題
  • #日本の開発協力
研究領域
開発協力戦略
研究プロジェクト