「アジアの経験をアフリカに」

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「アジアの経験をアフリカに」というテーマは日本の開発協力のマニフェストとして有効に機能するか。アジアにおける日本の支援の成功を他の地域で再現する要因とは何か。本稿はこの問いを念頭に「カイゼン」と「緑の革命」を事例として、支援(介入行動)と成果及びそれらに影響を与える条件を検討した。
 少なくとも本稿の観察期間である初期〜中期段階では、アジアとは異なる条件の存在から、アフリカでの成果は両支援とも限定的であった。カイゼンでは普及員に対する生産管理技術の移転が、緑の革命では基礎的技術(畔、均平化、条植)が普及員不足で障害となり、企業や農家に浸透していなかった。

いずれもアジアでは障害として認識されるほどには顕在化しなかった普及の問題が、介入行動が適切に実施される制約となり成果にも重大な影響を及ぼした。

上記のテーマ自体の正当性は認められる。製造業の生産性/品質向上、食糧自給率向上や農家の所得上昇は、日・アフリカ双方で重要性が認識されていた。ただし成功経験を他地域に適用するタイプの事業では、両者の違いをいかに支援に反映させるか、成功した介入行動が機能しえた条件がターゲット地域でも実現するかという問いを、フィジビリティスタディに反映するには限界がある。また上記の文脈では、普及員拡充が成果をもたらすというシナリオは(例えば教育と経済成長の関係は一方向ではないという伝統的な内生性の問題が想起されるように)事前の精査にノイズとなる可能性もある。よって事業実施で発見しつつ経験学習を通じて介入行動を修正するという長い取り組みが前提となろう。

キーワード
カイゼン、緑の革命、ODA、アジアの経験、アフリカ

著者
渡邉 松男、 柳原 透
発行年月
2022年2月
ページ
24ページ
開発課題
  • #日本の開発協力
研究領域
開発協力戦略
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