Enhancing Readiness Programs for the Green Climate Fund

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Enhancing Readiness Programs for the Green Climate Fund

開発途上国は気候変動の影響に脆弱であり、先進国よりも深刻なリスクに晒されています。途上国による温室効果ガス排出の削減や低減を促し、また、気候変動の影響に対する適応を支援するための緑の気候基金(Green Climate Fund: GCF)が、COP16の合意に基づき、2011年に設立されました。GCFは、途上国政府が仲介機関を通さずに直接基金にアクセスできる制度となっている点に特徴がありますが、基金へのアクセスにあたっては、適正な資金運用のための信用基準や、社会環境ガイドライン、セーフガード基準を満たすことが求められています。基金では、途上国の基準達成を支援する「準備プログラム」を定めていますが、本稿はこの準備プログラムと受益国のニーズを分析し、そのギャップを明らにすることを目的としています。その上で、GCFの効果的な運用に向けた5つの政策提言を示しています。

本稿による分析と考察により、GCF「準備プログラム」と受益国のニーズの間には次のようなギャップが存在することが確認されました。第一に、途上国においては、気候変動対策のための資金の動員が最も重要な課題であるにもかかわらず、準備プログラムでは実際の資金動員及び活用への支援が不十分であること。第二に、気候変動対策においては、民間セクターが果たす役割が大きいにもかかわらず、準備プログラムの主たる対象は公的機関が想定されていること。第三に、これまで途上国が資金供与を受けて実施してきた開発事業の経験と教訓が十分に反映されていないこと、また、開発資金とGCFの相違点が十分考慮されていないこと。最後に、特に後発開発途上国が抱える援助吸収能力の問題が十分に考慮されていないこと。さらに著者は、GCFは他の気候変動関連基金に比較して、より厳格な信用基準を定めており、途上国ではこれまでの気候変動関連基金の経験だけでは、そのハードルを超えることが難しいことを指摘しています。

上記を踏まえ、著者は、今後のGCFの効果的な運用に向けて、次の提言を行っています。
① 準備プログラムは、GCFの信用基準準拠への支援についてより一層の充実を図るべきである。
② 準備プログラムは、その対象を公的機関のみならず、民間セクターまで拡大すべきである。
③ これまで開発事業のファインスで得られた経験と教訓を反映させる必要がある。この側面では、パリ宣言に代表される援助効果向上のための取組を参考にすることができる。
④ 気候変動に対して脆弱でありながら、十分な実施能力を有する機関を持たない途上国については、多国間開発金融機関(MDBs)や国連機関等に加え、IDFC(国際開発金融クラブ)参加機関などの国際金融機関よる代理実施を認めるべきである。
⑤ 準備プログラムはGCFの実施候補機関の能力を強化するだけではなく、当該国の経済・金融環境を向上させることをも考慮すべきである。

本論文は、韓国国際協力団(KOICA)ワーキングペーパー2014年3号として刊行されたものです。

著者
須藤 智徳
発行年月
2014年12月
言語
英語
ページ
43ページ
開発課題
  • #気候変動対策
研究領域
地球環境