『マタディ橋ものがたり—日本の技術でつくられ、コンゴ人に守られる吊橋』

  • #プロジェクト・ヒストリー

『マタディ橋ものがたり—日本の技術でつくられ、コンゴ人に守られる吊橋』

JICA緒方貞子平和開発研究所では、これまで行ってきたJICAの事業を振り返り、その軌跡と成果を分析してまとめた書籍「プロジェクト・ヒストリー」シリーズを刊行しています。本シリーズの第26弾として、『マタディ橋ものがたり—日本の技術でつくられ、コンゴ人に守られる吊橋』を刊行しました。

アフリカ中央部に位置し、日本の約6.2倍の面積を持つコンゴ民主共和国は、豊富な鉱物資源を持つ国。1960年に独立後、国際的な援助合戦の中、鉱物資源を大西洋に臨む港まで運ぶ鉄道を日本が建設することになりました。オイルショックによる世界的インフレの影響を受け、橋梁と取り付け道路の建設に規模は縮小されましたが、大河コンゴ川に架かるマタディ橋を本格的な鉄道道路併用吊橋として円滑に設計・建設できたのは、本州四国連絡橋建設に向けて研究開発が進んでいた最新の日本の技術を採用したからでした。マタディ橋が完成したのは1983年と日本の瀬戸大橋より5年も早く、コンゴ民主共和国と日本の友好のシンボルとなりました。

しかし、1991年のキンサシャ暴動の発生による政情不安のため、日本からの援助は途絶えます。不足する資金、調達困難な材料、維持管理の必要性への理解が少ない社会、足りない技術や経験、権力争いに影響される人材の配置、国内や隣国との紛争による人材の流出…。こうしたさまざまな困難に見舞われながらも、日本人エンジニアから吊橋建設と維持管理の技術を学んだコンゴ人エンジニアたちは、日本人が魂を込めて伝えた「橋を愛するこころ」を胸に、40年近く日々の点検と維持作業を続け、マタディ橋を大切に守り続けてきました。

2013年に行われたマタディ橋完成30周年記念式典には、建設に関わった日本人エンジニアたち「7人の侍」が自費で駆け付け、コンゴ人エンジニアとの再会を喜ぶ姿も描かれています。インフラ建設への支援は、それに携わる「人」の姿が見えにくいかもしれません。しかし、今もピカピカなマタディ橋は、「人」なくしてインフラは造れず、維持もできないことを雄弁に語っています。マタディ橋の「橋守」として維持管理に携わってきたコンゴ人エンジニアたちと、彼らを支えてきた日本人たちの今なお続く強い絆が伝わってくる物語です。

著者
マタディ橋を考える会
発行年月
2021年2月
出版社
佐伯印刷
言語
日本語
ページ
206ページ
関連地域
  • #アフリカ
開発課題
  • #運輸交通
ISBN
978-4-910089-10-2