『ヒマラヤ山麓の人々と共に—ビャコタ旦那のネパール・ブータン農業協力奔走記』

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『ヒマラヤ山麓の人々と共に—ビャコタ旦那のネパール・ブータン農業協力奔走記』

JICA緒方貞子平和開発研究所では、これまで行ってきたJICAの事業を振り返り、その軌跡と成果を分析してまとめた書籍「プロジェクト・ヒストリー」シリーズを刊行しています。本シリーズの第31弾として、『ヒマラヤ山麓の人々と共に—ビャコタ旦那のネパール・ブータン農業協力奔走記』を刊行しました。

「木を植えろ。この世を去った後でも、木は成長し、そして人々の中にも残るから」。そう語るのは、著者の冨安裕一氏。青年海外協力隊として計5年、JICA専門家として計32年、ヒマラヤ山麓に位置するネパールとブータンに赴任し、果物や高地野菜といった園芸作物の普及と産業化に半生を捧げてきた農業技術者です。

冨安氏が活動を始めたのは、ネパールとブータンが大きく変わろうとしていた激動の時代。協力隊時代の1975年からJICA専門家として活動した1999年まで滞在したネパールは、君主制国家から民主化の途にありました。一方、2000年から2019年までJICA専門家として滞在したブータンも、鎖国状態から開国し、民主化への変革の最中にありました。こうした情勢に加え、両国とも電気や道路などのインフラが十分に整備されていなかったり、さらには山岳地帯の急峻な地形ゆえに作れる作物や品種が限られたりと、さまざまな難関が待ち受けていたのです。そんな中でも、冨安氏は先頭に立ち、現地の人々と共に汗を流しながら、この地に適した作物や栽培法を開発し、園芸農業の裾野を広げていきました。ネパールでのジャナカプール農業開発計画からブータン西部での園芸農業振興プロジェクトまで多くの技術協力プロジェクトに携わってきた冨安氏は、その貢献が高く評価され、2014年にはブータン国王より「国家貢献勲章」も受章しています。

冨安氏がネパールを離れてからも現地の農家たちによって作られ続けたオレンジ、より増産されて換金作物に成長したスイカ、そしてブータンの市場でも見られるようになってきたみずみずしいナシや甘い柿。冨安氏のリーダーシップと地道な取り組みを経て、自給自足のための農業ではなく“仕事としての農業”に挑戦し始めた農家たちの努力が、まさに実を結び始めています。彼らとの交流の日々や現地の文化を紹介したエピソードもちりばめられ、冨安氏の両国への思い入れの深さが伝わってくる一冊です。

著者
冨安 裕一
発行年月
2022年8月
出版社
佐伯コミュニケーションズ
言語
日本語
ページ
217ページ
関連地域
  • #アジア
開発課題
  • #農業開発・農村開発
ISBN
978-4-910089-23-2