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【今月の研究ピックアップ】2025年はJICA海外協力隊発足60周年

2025.11.10

(写真:JICA/久野真一)

1965 年に発足したJICA 海外協力隊 は、ラオス、カンボジア、マレーシア、フィリピン、ケニアの5ヵ国へ29人を派遣したところから始まり、2025年で60周年を迎えました。2024年12月時点で、派遣国数は累計99ヵ国、派遣人数は5万7,000人に到達しています。これまでの事業の歩みは海外からも評価され、2016 年にはアジアのノーベル賞と呼ばれる「ラモン・マグサイサイ賞」を受賞しました。近年では、帰国した協力隊員による社会還元への取り組みにも注力し、自治体との連携強化を図りつつ、地域おこし協力隊制度との協働や社会課題解決型の起業支援を推し進めています。

2025年11月13日(木)には、「JICA海外協力隊発足60周年記念式典 」が開催されます。以下のJICA 青年海外協力隊事務局の公式 YouTube チャンネルにてオンライン配信されますので、ぜひご覧ください(15:00-17:30予定)。

JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は、これまでJICAが行ってきた事業を振り返り、その軌跡と成果を分析し、事実に基づいた読み物としてまとめた「プロジェクト・ヒストリー 」シリーズを刊行しています。その中で、JICA海外協力隊が登場する6冊をご紹介します。

『海外協力隊と大学院で国際協力の道を目指す―ザンビア特別教育プログラムの軌跡』

子どもたちが学校に行っても基本的な読み書きができない―。「極度の低学力」という課題を抱えるザンビア。広島大学では、修士課程の大学院生がJICA海外協力隊としてザンビアで活動しながら、同時に研究活動も行うというプログラムを実施。ザンビアの教育現場で、学生たちはさまざまな課題に直面し、研究を通じて考えを深め、成長していきます。

『未来ある子どもたちに「新しい体育」を―体育がつなげた仲間たちのカンボジア体育の変革』

カンボジアの全国の子どもたちに「新しい体育」を届けたい―。本書では、小学校から中学校、高等学校、さらには体育大学での「新しい体育」の普及に取り組んできた特定非営利活動法人ハート・オブ・ゴールドによる約20年の軌跡が綴られています。さらに、熱意を持った各地のカンボジアの教員たち、そして海外協力隊員など、共に信念をもって「新しい体育」の普及を推進した両国の関係者の声も紹介されています。

『ペルーでの愉快な、でも少し壮絶なスポーツ協力―国際協力をスポーツで』

1980年に青年海外協力隊員としてペルーに赴任した著者の綿谷章氏。人生の半分以上をペルーの選手育成や陸上競技の普及に捧げることができたのは、スポーツを通じて国際協力をしてみたいという少年時代からの夢と、2年間の協力隊の活動があったからこそだと言います。​​本書では、著者とペルーの教え子たちの心温まるヒューマンストーリーをご紹介します。

『ヒマラヤ山麓の人々と共に—ビャコタ旦那のネパール・ブータン農業協力奔走記』

「木を植えろ。この世を去った後でも、木は成長し、そして人々の中にも残るから。」​​青年海外協力隊として計5年、JICA専門家として計32年、ヒマラヤ山麓に位置するネパールとブータンにて、園芸作物の普及と産業化に半生を捧げてきた農業技術者の冨安裕一氏が、農家の人々との交流の日々や現地の文化を紹介します。​

『バングラデシュIT人材がもたらす日本の地方創生—協力隊から産官学連携へとつながった新しい国際協力の形』

IT資格という武器を若者たちに―。​​青年海外協力隊が始めたムーブメントから受け継がれてきた、バングラデシュのIT人材・産業育成と、日本の「地方創生」に同時に貢献する、産官学を巻き込んだ現在進行形のバトンリレーの軌跡をご紹介します。

『中米の子どもたちに算数・数学の学力向上を―教科書開発を通じた国際協力30年の軌跡』

子どもたちの学力向上のために何ができるか―。​​1987年にホンジュラスに派遣された一人の青年海外協力隊員の自身への問いかけから始まった、中米地域での算数・数学の教科書制作を中心とした教育協力。その歴史を本書ではひもときます。

また、JICA緒方研究所では、青年海外協力隊(現在のJICA海外協力隊)や国際ボランティア事業についての研究も実施しています。その成果の一部をご紹介します。

書籍『State-Managed International Voluntary Service: The Case of Japan Overseas Cooperation Volunteers』

青年海外協力隊の真の力は、受け入れ国の利益(現地の人々やコミュニティーの開発)および送り出し国である日本の利益(ボランティア自身の成長やキャリアアップ、日本社会への貢献)の両方に貢献できる点にあると言えます。本書は「国が運営する国際ボランティア事業」(State-managed International Voluntary Services : SMIVS)という概念を提示し、青年海外協力隊の受け入れ国と日本の双方に対する貢献を分析しています。また、SMIVSの長所と短所や、より広い視点からSMIVSの持つ意義と可能性を検討しています。

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【研究者インタビュー】JICA海外協力隊の成果と意義を社会心理学の観点で探る:早稲田大学大学院アジア太平洋研究科講師 大貫真友子さん

社会心理学者として、JICA海外協力隊事業についての研究プロジェクトに新たな視点をもたらした大貫真友子さんに、研究に携わることになったきっかけや、研究を通じて感じた想いについて聞きました。

書籍『青年海外協力隊は何をもたらしたか—開発協力とグローバル人材育成50年の成果』

本書は、ミクロ、マクロ、比較の3つの視点から青年海外協力隊事業を分析しています。ミクロの視点からは、隊員への意識調査で得られた量的・質的データを用いて、個々の隊員の活動のほか、住民や職場の同僚といった現地の人々の認識や思考、感情、行動、その相互作用を観察し、それらがもたらす開発協力や人材育成の成果を分析しています。マクロの視点からは、協力隊の制度・組織や政策、協力隊事業創設の歴史などを、そして比較の視点からは、欧米やアジア諸国が実施している国際ボランティア事業との類似性や相違性を分析することで、協力隊の役割を改めて捉え直し、その意義を検証しています。

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