『高倉式コンポストとJICAの国際協力 スラバヤから始まった高倉式コンポストの歩み』

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『高倉式コンポストとJICAの国際協力 スラバヤから始まった高倉式コンポストの歩み』

世界中で活用されている生ゴミリサイクル技術「高倉式コンポスト」の考案者、髙倉弘二氏が本書の著者です。「国際協力が一生のライフワークになるとは夢にも思わなかった」と言う髙倉氏が、活動の原点であるインドネシア・スラバヤ市の変貌を通じて、廃棄物減量に貢献する「高倉式コンポスト」の普及と発展の過程を描いています。

福岡県北九州市の企業でコンポストを研究していた髙倉氏は、2002年に同市の依頼を受けて国際協力銀行(JBIC)の円借款事業関連の専門家としてスラバヤ市に赴きます。その後2004年にJICA専門家としてスラバヤで活動中に確立した技術が、のちに「高倉式コンポスト」と呼ばれるようになりました。

本書では、高倉式と名付けた際のエピソードも披露。当初日本側はインドネシア語の名称を提案しましたが、インドネシア側から、「インドネシア語の名称ではインドネシア人は誰も信用しないが、日本語なら信用する。技術を開発した本人のTAKAKURAでどうか」と提案されたそうです。

研修員受入事業や、青年海外協力隊事業、草の根技術協力事業など、JICAのさまざまな事業を介して「高倉式コンポスト」技術は世界に浸透していきます。髙倉氏が現地で直接指導した国は日本を含めて14ヵ国、青年海外協力隊員が現地活動に取り入れた国は53ヵ国、日本での研修に参加した国は70ヵ国以上になりました。JICAによる「高倉式コンポスト」を介した協力は、2023年の現在も脈々と継承されています。

「高倉式コンポスト」の最大の特徴は、コンポストの基礎理論を再現する技術体系とし、現地での技術の適正化が容易になるように工夫したこと。つまり、現地で安価かつ簡単に手に入る資機材や機械、そして既存の設備を使用して取り組むことができ、現地の実情に応じて使用することで生ゴミのリサイクルを完結できる点です。

もともとコメを栽培している日本やインドネシアを念頭において作成されていたマニュアルも、協力隊事業や研修事業で活用される過程で、資機材を限定せず、最適な資機材を選ぶことができるようにブラッシュアップされていきました。世界中に散らばる協力隊員から寄せられる「想定外」の質問に対応するうちにコンポスト技術が深化していったいきさつも紹介しています。

髙倉氏は国際協力活動を通じて「人々に物事を伝えるときに一番大切なことは、『驚き・感動・笑顔』であることに気付いた」と言います。そして国際協力におけるサービスは「お互いが相手の立場に立ち、同じ目線で物事を考えることであり、それはとりもなおさず本当の意味での『協働』ではないか」と述べます。こうした言葉からも、髙倉氏の現場主義を貫くゆるぎない姿勢をうかがうことができます。

著者
髙倉 弘二
発行年月
2023年3月
出版社
佐伯コミュニケーションズ
言語
日本語
ページ
206ページ
関連地域
  • #アジア
開発課題
  • #環境管理
ISBN
978-4-910089-29-4