JICA緒方研究所

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No.138 Does a Rural Road Improvement Project Contribute to Inclusive Growth? – A Case Study from Bangladesh

 国際社会で近年よく用いられている「包摂的成長(Inclusive growth)」は、(経済)成長のペースとパターンの両方に関する概念である(貧困層・非貧困層両方の所得上昇、非所得貧困、不平等など)。開発途上国やドナーは、農村道路の整備は、交通の円滑化を通じ、農村経済や貧困削減にポジティブな効果を及ぼすと考えている。本論文では、農村道路改良プロジェクトが、バングラデシュの包摂的成長に及ぼすインパクトを分析した。
 分析方法は、大規模な家計調査パネルデータに基づくDifference in Difference手法を用いた。分析の結果、対象としたプロジェクトは、事業地域の平均家計所得(一人当たり)を大きく増加させ、国レベルで見た包摂的成長に寄与したとみられる。しかし、この所得増加は、最貧困層以外の家計の所得増加によるもので、これら家計が交通条件改善によって生ずる機会を所得向上につなげることができたことによると考えられる。他方、特に事業前の資源等賦存状況(土地所有、職業)が相対的に不利な家計は、プロジェクトの恩恵を受けなかった。分析対象プロジェクトの特有事情に留意を要するものの、農村道路改良プロジェクトは家計レベルでみると必ずしも包摂的であるとは言えない。
 よって、政策的には、貧困農村地域での農村道路改良プロジェクトでは、道路改良だけでなく、最貧困層に対する資源賦存状況(人材育成、雇用機会等)の改善に資する政策的介入も合わせて実施することが必要である。

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