JICA緒方研究所

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ワーキングペーパー

No.198 The Role of Emerging Donors in the Transformation of Traditional Donor Recipient Relationships: The Case of China in Myanmar

援助を受け入れる途上国は、長年の間、不平等な交渉力を余儀なくされる伝統的ドナー・レシピエント関係(援助の出し手と受け手の関係)に苦しんできた。本稿は、非伝統的な支援国である新興ドナーの力を利用することによって、援助受入国がこの不平等状態から脱却できる可能性を追及するものである。伝統的なドナー・レシピエント関係の変革が2段階で発生することを、標準的な合理的選択理論と詳細な事例分析によって示したい。

資金流入の規模をできるだけ大きくすることは、援助受入国にとっての一つの目標である。援助受入国が国際社会で支配的な開発規範を受容する限り、資金流入とくに援助資金流入は保証される。なお開発規範は、通常、OECD-DAC加盟国による援助の経済的・政治的条件(コンディショナリティ)として提示される。援助受入国には二通りの行動選択肢がある。国際社会の開発規範を受容するか受容しないかの二つである。もし援助受入国が、彼らの原則に合致しないとして開発規範を受容しない場合には、援助が停止される可能性があり、海外直接投資(FDI)など援助以外の資金フローも、経済制裁のために流入しなくなる可能性がある。しかしながらその場合でも、援助受入国は新興ドナーからの資金フローを確保することが可能であろう。新興ドナーは通常、国際開発規範に関心を持たないからである。

新興ドナーからの資金フローが確保されれば、援助受入国にとっての次の課題は、何らかの方法によって伝統的な援助国からの資金フローを確保し、資金流入量を増加させて自らのおかれた状況を改善することである。そこで考えられる一つの解決策は、伝統的な援助国との間での「相互の妥協」である。いいかえれば、双方がそれぞれの原則を可能な範囲で貫きながらも、受入国側は国際開発規範を部分的に受入れ、伝統的な援助国の側は資金フローを部分的に再開することである。伝統的な援助国にとって援助受入国の市場や資源が魅力的であれば、この方法が実現する可能性がある。伝統的な援助国は、新興ドナーが受入国の市場や資源を独占している現状に懸念を持つであろうし、彼ら自身も市場や資源にアクセスしたいと意欲を持つであろうから。伝統的な援助国と援助受入国は、相互の妥協によって、つまり相手方の原則を部分的に認めることによって、それぞれの置かれた状況を改善することができる。

このようなプロセスは、まさにミャンマーで発生したことであり、その過程で中国が決定的な役割をはたした。ミャンマーで起きたことの詳細な事例分析は、一般の援助受入国が新興ドナーを「テコ」として利用することによって、どのように「交渉力の非対称」を克服できるかを明らかにする。他の途上国がミャンマーの経験からヒントを引き出すことによって、非対称的なドナー・レシピエント関係の下でも、交渉力を強化することが望まれる。


キーワード: ドナー・レシピエント関係(援助の出し手と受け手の関係)、選択肢(選択可能な行動)、選択の結果としての効用、交渉力を強める「テコ」の作用、新興ドナー

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