No.218 Resilience against the Pandemic: the Impact of COVID-19 on Migration and Household Welfare in Tajikistan

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タジキスタンの経済は海外出稼ぎ労働者(主にロシアに滞在)からの送金に依存しており、近年ではGDPの25%を超える水準になっている。COVID-19のパンデミックは、移民および送金を減少させることを通じて、タジキスタン経済に悪影響を与えていると思われる。本稿では、コロナ禍発生前から取得を続けている月次家計パネルデータを使って、コロナ禍の家計厚生への影響をさまざまな角度から検証している。以下の通り、いくつかの新しい知見を得た。

第一に、パンデミックによる負の影響は、2020年の4月・5月に特に深刻だったが、その後徐々に緩和されてきた。いくつかの指標については、秋ごろに至って平準化した。第二に、パンデミックによる出稼ぎ者数(滞在中の人数)への影響は、予想に反し、春頃の大きいがごく一時的なものにとどまった。国境封鎖があったため、移民予定だった人々が渡航できなくなった一方、帰国予定だった人々も現地(主にロシア)にとどまり、仕事を続けていた。夏以降、出発と帰国が再開し回復傾向にある。移民の雇用と送金は、4月・5月に激減したが、その後急速に例年の水準まで回復した。第三に、回帰分析によって、移民・送金によって、コロナ禍発生以降の家計へのネガティブな影響が緩和されており、移民・送金が保険としての役割を果たしていたことが示された。総じて、COVID-19による負の影響は、発生直後一時的に深刻なものとなったが、移民のいる家計の方がより耐性があったと考えられる。

キーワード:COVID-19、送金、移民、タジキスタン、家計の厚生

著者
清水谷 諭、 山田 英嗣
発行年月
2021年1月
関連地域
  • #アジア
研究領域
経済成長と貧困削減
研究プロジェクト