JICA緒方研究所

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ワーキングペーパー

No.36 State Inaction in Resource Governance: Natural Resource Control and Bureaucratic Oversight in Thailand

本稿は、タイを事例として19 世紀末にその端緒を遡る天然資源行政の発達形態が後発の環境行政の実効性を制約していることを、行政史および部局間の利害分析から明らかする。環境問題は、しばしば新しい制度や組織の新設をもって対処される。しかし現実には、実質的な権限が問題の発生源となっている生産部門を統括する部局に保持されたままになっており、それゆえに後発の環境系部局は調査や計画といった、実効力をもたない業務に追いやられることが多い。途上国における環境政策の失敗は、行われた政策の成否もさることながら、本来行われるはずだった政策が、既得権の分布状況に縛られて不作為(inaction)に終わることに起因している可能性がある。

援助機関が環境保全を強化しようとするなら、このような行政内部における利害関係を把握したうえで、生産部門の抵抗をあらかじめ予想した計画を立てなければならない。そのためには、早い段階で生産関連部局を巻き込むか、あるいは地方分権の潮流に合わせて内務省のような面的な統治をおこなう組織と協力した案件形成が求められる。

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