JICA緒方研究所

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ワーキングペーパー

No.45 Success as Trap? Crisis Response And Challenges To Economic Upgrading in Export-Oriented Southeast Asia

本ワーキングペーパーは、ベトナム、マレーシア、タイを取り上げ、東南アジアの輸出志向型国家における経済成長を維持するための能力を考察している。特に、マレーシアとタイにおける「アップグレード」(産業構造の高度化)と「中所得国の罠」の克服についての展望に関心を有している。核となる議論は三ヶ国とも類似している。すなわち、各国は財産権、マクロ経済政策、そして、程度の違いはあるが金融監督をはじめとした分野で優れた改革を行い、1997 年と 2008 年の二度の経済危機に比較的上手く対応した。しかしながら、一部の例外はあるものの、改革は地場企業の競争力や技術革新の向上には繋がらなかったのである。こうした限界があったのは、先に述べた分野での調整に成功したことと、一次産品輸出からの収入、外国からの援助、インフォーマルな移民労働といった資源の利用が可能であったことの両方の結果である。そのような「安全弁」は既存の制度的配置や政治的取り決めを強化することで、アップグレードに不可欠な地場企業の競争力や産業間のリンケージを向上させる取り組みを損ねる危険がある。特に興味深いのは、東南アジア諸国に関する次の事実である。すなわち、対外的な貿易依存と脆弱性が様々な形での労働の参加に結び付いた西欧の国々とも異なり、また同様の脆弱性が少なくとも繁栄の分配へのコミットメントを生み出した東アジアの新興工業国(そして、脆弱性のために労働市場や生産性の決定過程に労働組合の頂上団体の参加が認められるようになったシンガポール) とも異なり、輸出志向の東南アジア諸国では、労働者は未だほとんど組織化されておらず、主要な争点に関する交渉への参加は認められていないのである。本研究が示しているのは、性質や強度の点で危機は様々であること、そうした様々な危機は政治エリートが新たな政治連合を促進したり、新たな調整形態(つまり制度)を育成するための意志や能力に対して異なる影響を及ぼすこと、そして、そうした制度は一層のイノベーションを基盤とした経済活動やより高所得の水準に移行するために特に重要だということである。

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