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資源ガバナンスと利害協調:発生・継起・人々の裁量空間に関する国際比較

本研究は、開発途上国が貧しい段階から経済力を付けていく過程において、資源・環境ガバナンスの諸制度がどのように形成され、また、その形成過程で一般住民が果たす役割がどのように変化するのかを考察しました。一般に、経済規模の拡大は公共部門の拡大を伴い、民主的な国家においては市民社会の発達をも促すために、公共空間をめぐる各種の利害対立が尖鋭化します。資源・環境ガバナンスは、公共空間の利害接触の焦点と見ることができます。ところが、従来の研究では、森林や水といった資源ごとの分析に終始するものや一国だけを取り上げるのみで比較分析の視点を欠いたものが多く、資源ガバナンスのプロセスそのものが社会の側に及ぼす影響に関する一般的な議論はなされてきませんでした。また、政策志向的な研究も個別事業レベルに限定される傾向にありました。

こうした反省を踏まえて、開発途上国の文脈において、公共空間の重要な位置を占める基礎的資源を対象に、その配分にかかわるアクターの利害対立を考察の材料として、将来の援助が環境協力にかかわる際の見取り図の提示を試みました。特に、途上国が貧しい段階から経済力をつけていく過程で、資源、環境のガバナンスの諸制度がどのように形成され、その過程で政府、企業、一般市民が果たす役割の変化について現地調査をベースに考察しました。事例対象地域は、カンボジア、タイ、中国、フィリピン、ザンビアなどにおよび、セクターも鉱物から森林、大気まで実に多様で、自然が「資源になる」過程で生じる政治的な問題と、それに対する政策的な対処のあり方を提示しました。詳細は研究成果一覧をご参照ください。