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インタビュー【JICA-RIフォーカス 第6号】マスワナ研究員に聞く

2009.10.01

世界金融危機後のアフリカ開発のポイントとは?——JICA研究所 マスワナ 研究員にインタビュー

Dr. Jean-Claude Maswana

JICA研究所では「アフリカにおける経済危機のインパクト」のテーマに取り組むジャンクロード・マスワナ研究員。7月9~10日に南アフリカ共和国の首都プレトリアで開催されたIPDアフリカ・タスクフォース会合では同研究テーマに関する発表を行うなど、活発な研究活動を続けています。

そのマスワナ研究員に、これまでの経歴や自身の研究領域・内容、そしてJICA研究所や日本に対する思いなどについて聞きました。

現在の研究内容

ご自身の研究領域や問題関心について教えてください

主な研究領域は、国際金融と開発経済です。学術的な興味はもちろんですが、私自身が 開発途上国の出身ですので、個人的に追求していきたい分野でもありました。

経済の動向を分析するためには、人間の生活の基礎となる要素が大きくかかわってきます。国の政治、社会、文化から、個人のイニシアチブや価値観まで、あらゆる側面から研究テーマにアプローチできるのは非常に興味深い。「経済」と「開発」は密接にリンクしていることが分かります。

JICA研究所では、「世界金融危機がアフリカの発展過程にもたらす影響」をテーマに研究を進めています。

研究のポイントは、主に2つあります。一つには、2008年のサブプライムローン問題に端を発した世界金融危機から、アフリカが実際にどのような影響を受けたのか。そして二つ目には、アフリカの経済分野の開発において、これからどのような影響が起こりうるのかについてです。具体的には、今世界を取り巻くアンバランス(=不均衡)を是正するために必要とされるコスト、また、アメリカや日本を始めとする先進諸国による景気刺激策の波及効果に注目しています。最終的にはこれらの研究成果をもとに、援助関係者やアフリカ諸国の政策決定者に政策提言を行っていきたいと考えています。

金融危機に対して、どのような対応や対策が考えられるでしょうか

何が解決の糸口になるか、一概には言えませんが、まずは先進国と途上国間にある経済の不均衡を是正することが必要でしょう。現在、世界金融危機の影響により、世界経済のバランスは大きく崩れているのです。

世界金融危機を脱する糸口として、アメリカの経常赤字と東アジアの莫大な貿易黒字の差を埋めるべく、先進国間の早急な対応が求められています。その手段の一つとして、東アジアや石油輸出国で取り引きされる金融商品に運用されていた巨額の資金を、アフリカのインフラ開発に活用することは有益だと考えています。

また、アフリカの経済基盤は脆弱ゆえに、昨今の金融危機により負の効果を強く受けていることは否定できません。私たちは、今回の金融危機を含めてさまざまな経験から学び、今後起こりうるリスクを予測し、対処していくことも必要でしょう。

アフリカの開発で重視されるポイントは

アフリカ開発を考える際、外的要因、内的要因の二方向から問題を分析しなければなりません。まず外的要因から考えると、「貿易」が一つのカギとなります。過去の東アジア諸国の成功例を振り返っても、貿易の拡大が経済発展の大きな切り口となっているからです。さらに、アフリカが世界の価値連鎖に加わり、輸出の多様化に力を入れていくことも、重要なステップになると思います。

内的要因としては、「教育」の問題があります。例えば車を製造する場合、部品だけあっても、組み立て方を知らなければ何も生まれてきません。それと同じことです。アフリカは天然資源に恵まれていますが、それを生かすに十分な「知識」と「人材」が育っていないのです。

今アフリカで一番必要とされていることは何か。まずは、貿易を通じて他国とのかかわりを強化することです。さらに、ODAなどの財政的支援や技術協力をアフリカの発展に効果的に活用していくべきです。そして今後は、発展を「起こす」ことよりも「持続する」ための方策を検討していかなければなりません。

これまでの経歴

話は研究から離れますが、来日されたきっかけなどをお聞かせください

日本に来て14年になります。母国のキンシャサ大学を卒業した後、日本の金融システムに関心があったこともあり、文部省(当時)の奨学金に申請しました。名古屋大学大学院で博士号を取得してからは、日本福祉大学で非常勤講師をしていました。2004年からは京都大学大学院経済学研究所で講師を務め、2009年からJICA研究所の研究員を兼任しています。

異国で生活するということは、日々挑戦です。どこに行くにも、何をするにも新しい発見がある。もちろん、文化も習慣も違う日本では大変なこともあります。言葉の壁も完全には取り払うことはできませんが、日々さまざまな人と"関わり合い"を持つのは楽しい。そういうことも併せて、日本で過ごす時間は私自身にとって意義深いものです。

JICA研究所・日本への思い

現在の研究環境、その他ご意見などあればお願いします

これまでアカデミックな場所に身を置いてきましたが、その間も「政策」というものは、しっかりした「研究」に裏打ちされているべきだと思いました。特に開発援助分野ではそう感じました。そして、開発援助分野で「研究」と「政策」をつなげる一つの方法は、開発援助の実務者間で研究を行うか、または、開発援助政策や実施において、現場で起こっている変化に積極的に取り組む研究所や省庁で研究を行うことだと思いました。JICA研究所は、そうした私の研究ニーズを満たしてくれる最適の場所と言えます。

またJICA研究所は、現在の政策が抱える問題に注目し、グローバル化に伴う急速な構造的変化にもっとも適切に対応しているような印象を受けます。グローバル化により、私たちはこれまでにない挑戦と開発目標に直面しており、効果的な対応や新たな知識が今まさに必要とされています。私の研究も、このような挑戦にいかに貢献しうるかが問われていると感じています。

アフリカ出身の人間として、アフリカが発展していくためには、東アジアの成功経験が大きなヒントになると確信しています。このことからも、長年にわたり、アジアの開発プロセスの一役を担ってきたJICAの下で研究を進めることは、非常に意義あることなのです。

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