スティグリッツ教授主宰のシンクタンクとJICA研究所が共同でアフリカ・タスクフォース会合を開催

2009.08.03

2009年7月9日から10日までの2日間、南アフリカ共和国の首都プレトリアで、IPD(Initiative for Policy Dialogue: 政策対話イニシアチブ)アフリカ・タスクフォース会合が開催されました。本会合はノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ教授(米国コロンビア大学)が創設したIPDとJICA研究所が共催する会合で、今回は開催国の南アフリカ共和国貿易産業省の協力で、市民公開討論会も実施されました。

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恒川所長(左)のスピーチに耳を傾ける
スティグリッツ教授(右)

IPD は、地域・国別の課題に対する政策提言を目的としたシンクタンクで、政策立案者と研究者をつなぐ役割を担っています。 2006年から毎年行われているアフリカ・タスクフォース会合 では、アフリカにおける開発や経済の諸課題について政策決定者とともに議論し、提言を行っています。今年のテーマは2つあり、ひとつはアフリカ経済における国際金融危機の影響、もうひとつは土地、農業および気候変動の問題についてでした。そのほか、ホスト国である南アフリカ共和国の産業政策も議題となりました。

本会合では、JICA研究所の恒川惠市所長がオープニングスピーチで、JICAのアフリカ事業について説明すると同時に、エチオピア連邦民主共和国の首都アディス・アベバで昨年開かれたIPD会合での提言を受け、JICAが同国で行っている開発支援事業に言及しました。具体的には、エチオピアの貿易産業省と共同で、次期5カ年開発計画への貢献を目指す製造業振興のための戦略を議論する政策対話について、また今年8月から開始される産業振興支援のひとつである"カイゼン"プロジェクトについて述べました。恒川所長は「エチオピアでは30工場でのパイロットプロジェクトがおこなわれるが、今後、ほかのアフリカ諸国にも広がる可能性がある」と話しました。

武内進一上席研究員は、「紛争と土地所有権」をテーマに発表しました。ルワンダのケースを取り上げながら、「土地問題の安定のためには、正統性のある安定した政権が必要」とし、自身の研究の「政治的含意」として、「民主的方策による貧困政策が、時の政権の正統性を高める上で重要」と主張しました。

マスワナ研究員は、「世界金融危機と景気後退-アフリカにおけるインパクトと開発の展望-」と題した論文を、自身の研究の中間発表としてプレゼンしました。その中で「今回の経済危機の最悪の状況はこれからやって来る」とし、「経済危機の直接的影響だけを見るのではなく、先進国の調整政策がアフリカに今後及ぼすと予測される影響についても考えるべきだ」と述べました。

そのほか、斎藤克郎JICA農村開発部次長が、「CARDアフリカ米増産のための同盟イニシアチブ」について、藤田幸一教授(京都大学東南アジア研究所)が、「インドにおける緑の革命と経済発展-アフリカへの含意-」、朽木昭文教授(日本大学生物資源学部)が、「アジアの産業集積と貿易の経験から学ぶこと」と題して、それぞれ発表しました。

また会合終了後、スティグリッツ教授に本会合の全体的な感想を聞くと、「90年代のアジア金融危機の経験を生かすことは、今の金融危機に対するアフリカ諸国の政策にとっても重要で、特に経済を安定させるために東アジアの政府が90年代の金融危機下での社会不安にどのように対応したのか、アフリカ・タスクフォースでは今後も注目していきたい」と述べました。

■ Agenda & Papers
※青字をクリックすると発表資料が閲覧できます。

July 9

9:00-10:00
Introduction
 Joseph Stiglitz, Co-President, Initiative for Policy Dialogue,
 Columbia University
 Keiichi Tsunekawa, Director, JICA Research Institute
 Akbar Noman,Senior Fellow, Initiative for Policy Dialogue,
 Columbia University

10:00-11:30
Global Recession and Africa Ⅰ
 Louis Kasekende, Chief Economist, African
 Development Bank
 Joseph Stiglitz
 Valpy Knox, Professor and Department Head, Department of
 International Development at Oxford University
 John Weeks, Professor Emeritus of Development Economics,
 SOAS
 Pierre Jacquet, Chief Economist, Agence Francaise de
 Developpement

11:30-12:00 Break

12:00-13:00
Global Recession and Africa II
 Seeraj Mohamed, Director, Corporate Strategy and Industrial
 Development Research Programme in the School of
 Economic and Business Sciences
 Jean Claude Maswana.pdf , Research Fellow, JICA Research
 Institute
 David Hulme, Executive Director, Brooks World Poverty
 Institute

13:00-14:00 Lunch

14:00-15:00
Land and Agriculture
 Howard Stein, Professor, University of Michigan
 Shinichi Takeuchi.pdf , Senior Research Fellow, JICA Research
 Institute
 Roy Prosterman, Founder and Chairman Emeritus,
 Rural Development Institute, Emeritus Professor of Law,
 University of Washington
 Hans Binswager, Sector Director for Rural
 Development and Environment, Africa Region, World Bank

July 10

9:00-10:00
Aid and Trade
 Akifumi Kuchiki, Director-General, Institute of Developing
 Economies, Japan External Trade Organisation (IDE-JETRO)
 Julia Cage, Ecole Normale Superieure

10:00-11:00
Climate Change and Africa Alessandra Gianni
Discussant:
 Pierre Jacquet

11:00-12:00
Agriculture and Africa I
 Akbar Noman
 Simon Roberts, Divisional Manager Policy and Research,
 Competition Comission South Africa

12:00-13:00
Agriculture and Africa II
 Katsuro Saito.pdf , Director of the Forestry and Natural
 Environment Department, JICA
 Koichi Fujita.pdf , Professor, Center for East Asian Studies,
 Kyoto
 Francis Wilson, Professor, University of Capetown

13:00-14:00 Lunch

14:30
Public panel
"Macroeconomic management and industrial-
technology policy in the South: Some salient issues
for South Africa"

 Joseph Stiglitz
 Mushtaq Khan, Senior Professor in Economics, Associate
 Dean of Research for the Faculty of Law and Social Science,
 SOAS, London

開催情報

開催日時:2009年7月 9日(木)~2009年7月10日(金)
開催場所:南アフリカ共和国 プレトリア シェラトンプレトリアホテル

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