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アフリカ経済の発展に中国の教訓を生かす

2011.03.04

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サハラ以南のアフリカでは2000-09年の期間で1960年代以降最大となる長期経済成長(年平均GDP成長率5.6%)を記録しました。この成長を支えるのは産出される豊富な天然資源であり、鉱物や石油など一次産品が主要な輸出品になっています。しかし、一次産品への依存が高くこれほどの成長でも貧困から抜け出すには不十分であるため、アフリカは依然として世界の後発開発地域のひとつに甘んじています。一方、日本を抜いて正式に世界第二位の経済大国となった中国は、アフリカの重要な貿易パートナーとして存在感を増しつつあります。JICA研究所のジャンクロード・マスワナ研究員によると、中国がアフリカの輸出市場に占める割合は1990年には2%にも満たなかったものの、その後20年間で15%へとアフリカ経済史上最速のペースで増加し、非常に大きなインパクトをもたらしています。中国の経験に学び、時代の流れをつかむ態勢を整えられれば、アフリカ諸国にも更なる成長を遂げるための絶好のチャンスが訪れることになるでしょう。

マスワナ研究員は、アフリカ経済の成長の推進力となりうる分野を模索する研究を進めており、2011年2月16、17日、エチオピアのアディスアベバで開催されたOECDの中国-DAC研究グループ (The China-DAC Study Group) の会合に参加、100名を超す聴衆の前で発表をしました。この会合は、中国国際扶貧センター(IPRCC)、OECD-DACおよびアフリカ連合の共催で行われたものです。中国、アフリカ諸国およびOECD加盟国の政府関係者と関連分野の専門家が、アフリカでのビジネス開発に向けた環境整備をテーマに意見を交換しました。

同研究員の発表の下敷きとなった「中国・アフリカ貿易の新たなパターンおよび事業開発の可能性」と題した執筆中のペーパーでは、アフリカの輸出競争力と輸出品目ごとの貿易需要を明確にする目的でさまざまな貿易パターンを検証。中国をはじめアジア諸国との貿易動向が急速に変化するなか、とりわけ輸出がどのように展開するか各種分析手法を用いて解明しています。マスワナ研究員は、中国とアジアの先進国・地域(日本、韓国、香港など)やアジアの新興国(カンボジア、インドネシア、マレーシアなど)との貿易動向を参考にしつつ、以下の研究結果を紹介しました。 (1)貿易量が急増しているにも関わらず、アフリカの対中国輸出のパターンは依然として一次産品依存型であり、経済活動や生産過程における付加価値という概念が生まれるまでに至っていない。(2)中国は、先進アジア諸国から輸入した部品を国内で組み立てて完成品を輸出するという手法で台頭し、世界の工場としての役割を担うことで経済の急成長をなしとげ、蓄積した知識と技術を使って今なお成長を続けている。(3)アフリカの主要輸出品は依然として原材料だが、欧米諸国やアジアの新興国への部品輸出国としての存在感を増してきており、製造業をテコ入れして労働集約型製品を売り込むことができれば、アフリカの成長に大きな可能性が生まれるということが示唆されている。

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(上)セネガル・ダカールの職業訓練所で訓練生たちにアドバイスするJICA顧問。 (2005. Kenshiro Imamura/JICA)
(文頭)ルワンダ・トゥンバの茶畑で茶摘をする農家の人。茶葉はコーヒーに次いでルワンダ第2の主要農産物で、その品質は最高水準と言われている。(2007, Atsushi Shibuya/JICA)

もちろん、すべてのことには熟練労働者の存在は欠かせません。技術を磨く方法はさまざまですが、その中のひとつに、多国籍企業による直接投資があります。マスワナ研究員は「ソニーやトヨタのようなグローバル企業がアフリカに工場を作れば、そこでの実演や訓練が現場での実習のチャンスや技術の普及につながる。」と言います。また同研究員によると、労働者の技術を高めてアフリカに競争力をつける以外に発展への道はなく、日本などの援助国は今後こうした分野への支援を強化していくべきとしています。

アフリカにとって理想の未来とは、新たな経済的奇跡を生み出す拠点となり、厳しい競争を勝ち抜いてアジアの新興国や中国だけでなくアジアの先進国やヨーロッパ各国をも追い抜くことです。もちろんそのような未来は一夜にして実現できるものではありません。まずは、自転車製造など基礎的技術からスタートすることだ、とマスワナ研究員は言います。「技術は一足飛びに進むものではない。一歩ずつ高まっていくものだ。」と。

どんな好景気にもいずれは必ずかげりが出てくるもので、チャンスをいかして成長するつもりなら、これからの数年間こそがアフリカ諸国にとって正念場です。アフリカが好機をつかみ、世界市場に食い込むことができるか否かは、まずはアフリカ各国自らの努力にかかっています。しかし、JICAなど開発援助機関も、効果的な支援によってその努力を大きく後押しすることができるはずです。

* 本研究結果は今年中にワーキング・ペーパーとして出版予定です。

関連研究領域:成長と貧困削減

問い合わせ先

JICA研究所企画課
TEL: 03-3269-2357  FAX: 03-3269-2054

開催情報

開催日時:2011年2月16日(水)~2011年2月17日(木)
開催場所:エチオピア アディス・アベバ

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