世界銀行チーフエコノミスト ジャスティン・リン氏、開発の新しいアプローチを提案

2012.03.14

2012年2月29日、JICA研究所は、世界銀行のチーフエコノミストであり上級副総裁のジャスティン・リン氏を迎え、セミナーを開催しました。同セミナーでリン氏は、かねてから提唱してきた開発の新たなアプローチである「New Structural Economics(NSE)」を紹介しました。

リン氏は世界銀行において経済分野の研究課題を取りまとめており、これまで多くの書籍や国際的な学術誌、歴史や開発に関する叢書などで自身の考えを発表してきました。

セミナーでは、まず、1950年代から始まった開発経済理論の変革について、簡潔な説明が行われました。そして、昨今の経済危機に触発された多くのエコノミストたちと同様に、世界銀行のエコノミストたちも開発の新たなアプローチを模索する中、今年1月に『New Structural Economics: A Framework for Rethinking Development and Policy』という書籍を出版したことを明らかにしました。同書では、経済構造の構成要因とその変容を理解するためのNSEという概念が紹介されるとともに、開発政策のための斬新な考え方が解説されています。イベントでは、この新たなアプローチの概念が紹介されました。

NSEの主な概念は、市場経済を開発の根幹としながらも、その過程において政府が構造変革を促す役割を担うべきというものです。「急速な経済成長を遂げた日本や“East Asian Tigers”と称される韓国、台湾、シンガポールのような国々ではこの概念を共有しており、中国でも今まさに同じような状況にあります」とリン氏は指摘。「政府と市場の役割のバランスを保つための概念である、NSEを知ってもらえればと思います。開発の過程では、政府と市場は協力する必要があるのです」と述べました。

セミナー後にリン氏は「JICAにはいくつもの途上国を援助し、そこで得た見識を他の途上国の開発政策に転換してきた豊富な経験があります。NSEも、そうしたJICAの援助手法には学ぶところは少なくありません。私は、格差の縮小や貧困の克服に取り組む国々を支援するために、NSEを提唱したいと思います。NSEはまだ主流の考え方ではありませんが、JICAと協働で共通のゴールを達成するために、NSEを広めていきたいと思います」と語りました。

ムービー・コメンタリー

Justin Yifu Lin
Chief Economist, The World Bank

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