IDS所長ハッダード教授 グローバルな食糧と栄養の安全保障に関する重要研究課題を語る

2012.03.22

2012年3月8日、JICA研究所はローレンス・ハッダード教授(英国サセックス大学開発学研究所所長)を迎え、世界的に重要度の高い「食糧と栄養の安全保障」というテーマでセミナーを開催しました。ハッダード教授は貧困や食料の安全保障、栄養不良などの問題を専門とするエコノミストで、開発における食糧の安全保障問題の世界的なオピニオン・リーダーの一人です。

ハッダード教授は、食糧と栄養に関する研究テーマのうち「なぜ南アジアの栄養不足は突出しているのか?」「サブサハラ・アフリカで農業革命を起こすために何をすべきか?」という2つの重要課題に対処すべく選んだ、緊急度の高い10項目の研究課題を紹介しました。

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ローレンス・ハッダード教授

同教授が指摘したポイントの一つは、世界の栄養不良の子どものうち約45%を南アジアが占めており、南アジアが抱える人口の多さも関係しているとはいえ、この割合はサブサハラ・アフリカと比べ、非常に高いものになっているということでした。インドのような急速な経済成長を遂げている国においても、栄養不良児の割合が下がっていないということ、そして、その事実に多くの人が気づいていないということは問題だとハッダード教授は指摘しています。

一方、サブサハラ・アフリカについては、耕作に適した肥沃で広大な土地があり、農業分野において非常に大きな潜在能力を秘めている地域であると語りました。これを踏まえ、同教授は「近い将来、アフリカでの農産物の生産性・生産量が爆発的に増加するだろう」と述べ、これはアフリカに限らず世界全体にとっても重要なことだとの認識を示しました。

ハッダード教授が選んだ緊急度の高い10項目の研究課題は、そのほか「どうすれば農業は、より栄養不足人口の削減に貢献できるか?」、「社会的アカウンタビリティ(説明責任)が増すことで、サービス提供は改善されるのか?」といった、主に南アジアにおける課題から、サブサハラ・アフリカにおける「大規模農場か、小規模農場か?」、「食料価格の不安定さはどのくらい重大視するべきか?」といった課題に及びました。

また、農業や食料に関連する分野においては、一度投資するとその後の計画変更は非常に困難であるため、投資する地域や栽培する穀物の種類などの決定において、戦略的な意思決定をしていくことが死活的に重要であると指摘し、そのような戦略的意思決定の観点から、この10項目を重要研究課題として提案したのだと説明しました。

ムービー・コメンタリー

Lawrence Haddad
Director, The Institute of Development Studies, in Sussex, U.K

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