UNDP人間開発報告書室長がJICA研究所で開発効果の測定法について講演

2012.03.26

JICA研究所は3月14日、国連開発計画(UNDP)人間開発報告室のハリド・マリク室長を研究所に迎え、「Diverse Development Paths: Practice and Theory (多様な開発手法:実践と理論)」と題するセミナーを開催しました。

開発エコノミストとして数々の国連ポストを歴任したマリク氏は、現在UNDP人間開発報告書室の室長として、人間開発報告書の監修をしています。人間開発報告書とは、最新の開発課題や国際潮流に着眼しUNDPが毎年発刊しているレポートで、現在2012-13年版の作成が進められています。マリク氏は今般、東アジア地域の開発実務者や専門家を集めて開かれた、UNDPとJICA研究所の共催による人間開発報告書のコンサルテーション・ミーティングに出席するため来日しました。

UNDP人間開発報告書室 ハリド・マリク室長

今秋発刊予定の人間開発報告書2012年版のタイトルは、「Rise of the Global South: Human Progress in a Diverse World (開発途上国の台頭:変容する世界における人間開発)」で、ブラジル、中国、インドなどの新興国の台頭とそれが世界に与える影響に焦点を当てています。

マリク氏はセミナーの中で、 1) なぜ国によって発展度合いが異なるのか? 2) 効果的な政策とは何か?その適用性は? 3) 成果をどのように測定するべきか?という開発を考える上での3つの質問を投げかけ、その対処方針について自身の見解を述べました。

従来の考え方では労働や資本などの要因が重要視されますが、同氏は、オーナーシップ、キャパシティ、政策の3点を開発の推進要因と捉え、これらに注目していくより幅広い枠組みを提案しています。また同氏は、中国やインドなど大国に加えて、バングラデシュやアイスランド、モーリシャスなどの小国の成功例を挙げており、これらの国々には世界市場への開放性、台頭する企業家精神、社会革新、政府の実行力などの共通する特性がある一方で、政策は各国の情勢によって異なっていると指摘しました。その後マリク氏は、開発効果の測定方法に触れ、多くの文献がGDPなどの指数を利用しているが、指標としては不十分であるとの認識を示しました。同氏はまた、「人間開発はまさに測定の中心となる領域」と述べており、人類が直面する課題をより客観的に捉えることのできる指標としてUNDPが提唱する人間開発指数について説明しました。

最後にマリク氏は、「哲学的な言い方をすると、人間にとって何が大事かを見失ってはいけないということだ」と述べ、—時間余りの講演を締めくくりました。

ムービー・コメンタリー

Khalid Malik
Director, Human Development Report Office, UNDP

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