ブルキナファソとニジェールの現場でJICA事業のインパクト分析を促進

2011.10.04

小塚英治リサーチ・アソシエイト(RA)は8月21日~9月4日、ブルキナファソとニジェールを訪問しました。ともに、JICA研究所がかねて取り組んできた研究プロジェクト「JICA事業の体系的なインパクト分析の手法開発」の中で実施している「みんなの学校プロジェクト」のインパクト評価にかかわるものです。ブルキナファソではデータ収集のための現地調査を実施中で、今回の訪問では首都ワガドゥグ及びガンズルグ県で、基礎教育・識字省や国家統計・人口局(INSD)、みんなの学校プロジェクトなどを訪問し、就学率の調査を開始するための協議を行いました。またニジェールでは、首都ニアメで、みんなの学校プロジェクト、教育省、国家統計局などを訪問し、新たなインパクト評価の計画を策定しました。

ブルキナファソでJICA研究所は09年から、国家統計局(INSD)の協力のもと、同国の「みんなの学校プロジェクト」のインパクト評価のためのデータ収集を行ってきました。これまでに、広域調査と経済実験、統一試験の3種類の現地調査を終えましたが、最後の就学調査を今年10月末からいよいよ始めます。就学調査では、6~8歳児をもつ親が、子どもの就学にどのような影響を与えているかを調べます。親が子に学校に行かせたいかどうかという「就学決定要因」には、親の所得をはじめ、学校への距離、親の教育のバックグラウンドなどさまざまなものが考えられますが、これらに加えて学校運営委員会(COGES)の設立も就学決定に影響があったのかを分析する予定です。この調査では、およそ1カ月をかけ、20の村で合計400人(各村20人)の親を対象にインタビューします。調査で得られたデータは3月までに取りまとめられ、4月からデータの分析を開始する計画です。

またニジェールでは、「みんなの学校プロジェクト」の効果についてインパクト手法を使って評価します。JICAはニジェールで2004年からみんなの学校プロジェクトを開始し、そこで開発されたモデルの有効性がニジェール政府により認められ、全国に普及されました。このモデルの重要な柱が、COGESを機能させ、全国の学校に普及させるために最低限の要素を入れた「ミニマムパッケージ」の存在です。ミニマムパッケージとは「COGES委員選出のための民主的な選挙」「学校活動計画の策定、実施、評価」「COGES連合とCOGES担当官によるモニタリングシステム」で構成されます。インパクト評価では、このパッケージの効果を計測する予定です。もうひとつは、「フォーラムアプローチ」に対する評価です。フォーラムアプローチとは、ニジェール国内の各州で教育関係者が集まり、教育についての課題を話し合い、そこで出てきた課題について取り組むというものです。ニジェールでは「女子就学」や「教育の質の改善」などが重要テーマとされていますが、それが実際にどのような成果を生んだのかを調べます。データ収集は早ければ12月以降に開始される予定です。

小塚RAは「ニジェールのみんなの学校プロジェクトは、JICAプロジェクトの成功事例として取り上げられることが多く、実際にプロジェクトの対象地域では就学率や生徒の成績が向上した。しかし、これらの教育指標の向上には、プロジェクト以外にも様々な要因が影響している可能性がある。正しい教訓を導き出すためには、プロジェクトがどのような効果をもたらしたのかインパクト評価の手法を用いて分析することが重要」と話します。

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広域調査で子どもにインタビューをする調査員

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給食を準備する子どもたち

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公共財実験の様子

※写真は全てブルキナファソにて撮影

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