宮崎卓研究員、成長と貧困の関係を把握するためインドネシアで農村調査

2011.10.27

宮崎卓研究員は9月12~21日、JICA研究所の研究プロジェクト「インドネシア農村部における成長と貧困削減の実証研究」(期間:08年10月~12年3月)の一環として、研究分担者である立命館大学島村靖治准教授とインドネシア・ジャワ島の東に位置するロンボック島とスンバワ島を訪問し、農村調査を実施しました。

このプロジェクトにおいては、インドネシアの気候の異なる7州の農村で、2,200の家計を対象として、2007年、2010年の2回にわたり、人々の生活の様々な面に関する質問を行ってきました。昨年2010年分のデータが揃ったため、07年から10年にかけて、農村の人々の生活にどのような変化が生じたのか、を把握するため、分析を行ってきましたが、その中で、大きく以下の疑問が生じてきました。

──インドネシア全体として所得・消費が増加しているなかで、特に大きく所得を伸ばしている農家の家計はどのような特徴を有しているのか──。

──洪水や干ばつといった外的ショックが生じた場合、通常であれば、農作物の収穫量が減少、供給が少なくなるため、価格が上昇すると考えられるが、データ上では、『灌漑設備を有する村』では、作物価格の上昇をもたらしていないが、これはなぜか──。

今回の調査は、これらの疑問を探るべく、上記家計の対象となった家計を訪問、追加的でより詳しいインタビューを行い、分析を、より現実を捉えた、深いものとすることが狙いです。これらの疑問を解き明かすため、訪問先としては、調査対象7州の中でもとりわけ所得水準が低く、洪水や干ばつの影響が大きいと考えられるNusa Tenggara Barat州を選び、ここで11の村を訪ね、農民・漁村合計14世帯と地方政府関係者、村長らにインタビューしました。

今回現地を見、現地の人々の話を聞いて得られた理解は、いままで家の中で働くことのできなかった労働力が、どれくらい、小売業やバイクによる宅配など、農業以外の仕事に就いて収入を伸ばすことができるかが成長の鍵なのではないか。また、多くの小島からなり、島内の道路インフラも十分でない状況の下であっても、灌漑設備が整っていれば、十分な農作物を生産でき、これにより世界的な食糧価格の急騰、といった外からのショックを緩和する役割があるのではないか、というものです。また同様に洪水や干ばつの影響についても、灌漑設備の整備状況との関連性を見ていく必要があります。これらのテーマを、更なるデータ分析を通じて検証していく予定です。

その他にも、政府からの低金利の融資へのアクセスの困難さ、爆薬を使った非合法的、生態破壊的な漁法の横行、高潮や洪水の影響に伴う、昔建設された灌漑施設の劣化、など、現地の人々から、直面する様々な問題につき様々な話を聞くことができました。この調査を終えて宮崎研究員は「灌漑や道路といったインフラストラクチャーの整備による生産性向上が喫緊の課題であること」、また「金融、資源保有などの面で、制度面での改革が必要であること」が改めて明確に認識されたと考えています。

この研究プロジェクトの中間報告として宮崎研究員と島村准教授は、11 月26 ~27 日に名古屋市で開催される国際開発学会第22回全国大会で、「インドネシア農村部における経済成長とその恩恵:Pro-Poor Growth の視点からの一考察」のテーマで発表予定です。

Bugis村にて。高潮の被害を避けるべく高床式の家になっているが、川の中に建てられており脆弱

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Sukadamai村にて。この村には殆ど灌漑設備がなく、天水に頼っている。道路も整備されていない

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Kemban Kerang村。5人の子供を持つ彼は、農地借上の契約延長のための資金がなく伝統的な食品の小売に転職した

開催情報

開催日時:2011年9月12日(月)~2011年9月21日(水)
開催場所:インドネシア

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