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「条件付き現金給付(CCT)は、開発途上国の貧困削減に寄与するか」をテーマに研究所にて公開セミナー開催

2012.09.18

研究所は2012年9月10日、『Do Conditional Cash Transfers (CCT) Really Improve Education and Health and Fight Poverty? (条件付き現金給付は、教育・保健の改善、貧困削減に寄与するか?)』のテーマで、世界銀行人間開発局・アフリカ地域担当のリードエコノミストであるマリト・ガルシア氏を講演者として招き、公開セミナーを開催しました。

同氏は、近著 The Cash Dividend: The Rise of Cash Transfer Programs in Sub-Saharan Africaの中で、サブサハラ・アフリカ37か国で行われた123のCCTプログラムの成果について検証していますが、本セミナーでは、アフリカにおけるCCTの現況、およびCCTの教育・保健分野の改善と貧困削減へのインパクト、さらにこのプログラムがなぜ世界中で受け入れられているかなどについて発表があり、細野昭雄研究所所長をはじめとしたJICA関係者や大学関係者、さらにNGOなど一般からの参加者を交えての議論を行いました。

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マリト・ガルシア氏

細野所長は冒頭の挨拶の中で、「CCTは、MDGsの目標として挙げられている貧困削減や保健、教育サービスにおけるアクセスの向上を達成するうえで効果的なアプローチだ」と述べました。

CCTは1990年代にメキシコとブラジルで導入されて以来、世界中の低・中所得国に拡大され、2012年現在、全世界で320億ドルにおよぶCCTプログラムが52ヶ国以上で実施されていますが、そのうち100億ドル以上がアフリカに注がれています。

ガルシア氏は、まずCCTの概略として、「現金の受給者は、一般に貧困層や社会的弱者(孤児、女児など)であり、児童(特に女子)への教育機会の提供、HIV/AIDS対策、栄養状態の改善、乳児の定期的な健診の促進など、教育・保健分野を中心に大きなインパクトがあることが実証されている」と述べました。

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セミナー後半、質疑応答時の様子

氏は、さらに成功の要因としてメキシコや中南米での事例を挙げながら説明し、その要因として—事業費の捻出のため、政府が事業の集中的な選択を行い、予算配分の効率化が進むこと、事業を継続する中で、事業運営の効率化が進んだこと(運営費の削減)—などを紹介しました。

サブサハラ・アフリカ地域については、「過去2年間で現金給付関連の案件数が急増している背景に、貧困、干ばつなどの自然災害による穀物の価格急騰などから生じる食糧安全保障、また国内紛争によるセーフティネットの破壊があり、こういった問題を解決する上で、CCTプログラムが効果的である」とガルシア氏は説明しています。

ガルシア氏の発表よると、サブサハラ・アフリカにおけるCTプログラムの資金の半分は非政府機関から出資されており、政府のみからの資金は33%にとどまっています。しかし、サブサハラ・アフリカにおける多くの国では、国のガバナンスが改善されれば、中長期のCTプログラムに国内の資金をより多く提供できる可能性があることが指摘されています。

ムービー・コメンタリー

Marito Garcia
Lead Economist and Program Maneger, Human Development Department, Africa Region, World Bank

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