ブラジルでのCCTプログラムは女性のエンパワーメントに貢献するのか?

2013.01.17

1月10日、JICA研究所は、ブラジル・ミナスジェライス連邦大学から優実・ガルシア・ドスサントス准教授を迎えて、ブラジル政府によるCCT(Conditional Cash Transfer-条件付現金給付)プログラム「ボルサファミリア(Bolsa Familia Programa: BFP)」を事例とした、CCTによる女性へのエンパワーメント効果についてのセミナーを開催しました。研究所では、2012年9月にも世界銀行リードエコノミストを招き、開発途上国におけるCCTについての公開セミナーを開催しています。

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ガルシア准教授

細野昭雄研究所所長は冒頭の挨拶で、CCTへの国際的な関心が年々高まっている中で、BFPは今年で導入から10周年を迎え、中南米のメキシコ、チリと並んで国際的な貧困撲滅政策のモデルであることを紹介しました。

続いて登壇したガルシア氏は、ブラジル政府によるBFP受給者の90パーセント以上が女性であることを挙げ、サンパウロ市の貧困地帯で行ったフィールドワークを基に、BFPが「女性のエンパワーメントに貢献している」との一般的な見解について疑問を呈しました。

ブラジルのBFPは政府の貧困撲滅政策の主要な構想で、特に世代間の貧困再生産を断ち切ることを目的としています。ガルシア氏は、女性がBFPの恩恵を受けることによって家庭の収入が少しでも増えることにより、パートナーの男性に完全に依存せず家計を運営できることが可能になったこと、また夫婦間の主従関係が改善された点は評価しています。

一方で、受給対象者のブラジル女性は家庭において、依然として母親としての役割や高齢者の介護といった伝統的な役割を担うことが理想とされています。従って、働く意思があっても夫から専業主婦としてBFPを受け続けるように求められることもあり、女性の労働市場への参加の妨げとなっている側面があると同氏は指摘しています。こうした状況から、女性の一個人としての自立を妨げるだけでなく、労働市場に参加した場合にBF支給額の4倍以上にもなる最低賃金を得る機会を失うことにもなり得る点を強調しました。

ガルシア氏は、ブラジルのBFPは貧困者を支援する重要な社会政策であるが、同時に女性の労働市場への参加を促進する環境を整える必要性を挙げました。また同氏は今後の研究で、BFPに関する都市部と農村地域との比較も視野に入れていることを述べました。

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優実 Garcia dos Santos
ミナスジェライス連邦大学准教授

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