国連南南協力エキスポ2012で各国政府・国際機関関係者にJICAの経験を発信

2012.11.26

11月19日から23日までの5日間、オーストリア・ウィーンにて「2012年国連南南協力エキスポ」が開催されました。エキスポでは、国連南南協力事務所(UNOSSC)、国連工業開発機関(UNIDO)、およびJICAが共催した南南協力ハイレベル実務者会合(22日)、のほか、テーマ別の6つの南南・三角協力ソリューションフォーラム、NGO等によるミニフォーラムに加えて主会場横のスペースでは国際機関・NGOなどによる展示が行われました。エキスポへは、Kandeh K. Yumkella国連工業開発機関(UNIDO)事務局長、Hon. Wycliffe Oparanyaケニア計画相、Alison Helena Chartres国連南南協力ハイレベル委員会副議長、Jon Lomøy OECD開発協力局長等、南南・三角協力に関わる要人を含めて、国連機関、国際機関、先進国・途上国を含む各国政府関係者、NGO、民間企業等からのべ1,000人以上が参加。会合を通じて、優良事例の発表の他、一層効果の高い南南・三角協力の実現へ向け、活発な協議・意見交換が行われました。

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加藤JICA上級審議役(中央) 
写真提供:UNOSSC

22日のハイレベル実務者会合では、まず開会式において、加藤宏JICA上級審議役がChartres国連南南協力ハイレベル委員会副議長、H. E. Patrick I. Gomes ACP Future Perspective作業部会議長、Amita Misra UNIDO地域プログラム局長とともに登壇してオープニングスピーチを行いました。同スピーチでは、加藤上級審議役は、近年新興国を含む新しい開発アクターが勃興する中で世界を南北で分ける意味が低下して、開発協力の在り方・枠組みそれ自体が変容しつつある現状を背景に、南南・三角協力の在り様も変化が求められていることや、多種多様な南南協力の実績データの捕捉や評価が十分に行われていない等の点を指摘。さらに、JICA研究所は、今後の一層効果的な南南・三角協力のあり方を検討すべく、JICAの取り組みを中心に三角協力の事例分析を実施中であり、その成果の一端を研究レポートとして会場内で配布していることを紹介しました。

スケールアップに繋がる革新的な南南・三角協力の取組みやあり方について議論がなされた同日午後の第二セッションでは、本田俊一郎JICA研究所リサーチアソシエイトが、JICA「きれいな病院」プログラムについて、同プログラムが普及に努めてきた病院運営強化のための*5S-カイゼン-TQM(Total Quality Management)手法を最初に開発・実践したWimal Karandagoda医師(スリランカ・ランカ病院機構医療サービス部長)、および同手法のタンザニアでの普及に尽力してきたMohamed Ally Mohamed医師(タンザニア保健社会福祉省医療保健サービス質監理局長)と共に、アジア・アフリカ協力、ならびにスケールアップに繋がる革新的な三角協力の取組み事例として紹介しました。同プログラムは、前日の21日午後に開催された南南協力ソリューションフォーラム第5セッション(女性・青少年・健康)において、保健分野のソリューション賞を受賞し、Karandagoda、Mohamed両医師が受賞プレゼンを実施しました。さらに、21日午前のソリューションフォーラム第4セッション(農業・食料安全保障)では、JICAがドミニカ共和国と連携してハイチの農業普及員等能力強化を実施してきた「対ハイチ農業技術研修コースプロジェクト」も農業部門の南南三角協力ソリューション賞を受賞し、浅井誠JICA企画部主任調査役が受賞者パネルで事例を紹介。ソリューション賞を受賞した両事例とも、現在研究所で実施中の研究プロジェクト「事例比較を通じたキャパシティ・ディベロップメント(CD)アプローチの再検証」においてCDに資する南南・三角協力事例として取り上げており、エキスポ期間中配布した研究レポートにも掲載しているものです。

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本田研究員
写真提供:UNOSSC

23日の閉会式では、西川泰藏UNIDO事務局次長、Chartres国連南南協力ハイレべル委員会副議長(豪国連代表部参事官)、H. E. Ambassador Antonio Garcia Revilla在ウィーンG77議長(ペルー)、Lomøy OECD開発協力局長、Oparanyaケニア計画相らが演説。Chartres副議長は、閉会の辞にて、本田リサーチアソシエイトと二人の途上国カウンターパートと一緒に発表した「きれいな病院」プログラムに触れて、途上国のオーナーシップを最大限に尊重しつつ、JICAが知識のファシリテーション役を効果的に果たしている革新的な三角協力事例 と称賛し、類似の例が多く出ることを期待すると述べました。同閉会式では、JICAのこれまでの南南・三角協力に対する長期間且つ革新的な取組みに対して国連南南・三角協力賞が授与され、加藤上級審議役がJICAを代表して受賞しています。

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国連南南・三角協力賞を受賞
写真提供:UNOSSC

また、会期中を通じて主要会場横の展示エリアに設置されたJICAブースでは、JICAの南南・三角協力ポスター(「きれいな病院」プログラム、ドミニカ共和国連携によるハイチ持続的農業支援などの事例紹介)やパンフレット、さらには上述した研究所作成の南南・三角協力事例研究レポートも展示・配布しました。同レポートは、JICAの多様な三角協力の取組みについてわかりやすい紹介と分析を行っているとして参加者より好評を得ました。

今次南南協力エキスポにおいて、JICAが、同ハイレベル実務者会合の共催やJICAの南南・三角協力取組み紹介を積極的に行ったことで、日本、そしてJICAが南南・三角協力における中心的アクターとしてプレゼンスを示し、特に、研究所が南南・三角協力事例についてより客観的な分析を加えた事例を研究レポートの形で発信したことを通じ、より良い三角協力実現へ向けたJICAの姿勢を示すことが出来ました。今後も南南・三角協力に関わる多くの国際会議が予定されているなど、持続的な開発成果発現へ向けた、効果的な開発協力アプローチとしての南南・三角協力に対する国際的な注目は一層高まっていくことが予想されます。研究所は、関連する学術分野の分析視角を活用しながら今後もこの国際的な関心の高い南南・三角協力の事例分析を継続していきます。

*5S、カイゼンを病院サービス向上に生かす取り組みは、今回EXPOにてプレゼンテーションを行ったWimal Karandagoda医師がコロンボの一病院長として勤務していた際の発案。JICAはこれをアフリカに導入しやすいように方法論として体系化しました。

開催情報

開催日時:2012年11月19日(月)~2012年11月23日(金)
開催場所:オーストリア、ウィーン

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