ブルッキングス研究所とJICAの共同研究に基づく研究論文発表セミナーが開催

2013.02.13

1月31日、米国ワシントンDCに本部を置くブルッキングス研究所で、「アラブの春:政変克服とインクルーシブな成長に向けて(Arab Spring Countries: Beyond Political Upheaval and toward Inclusive Growth)」と題するセミナーが開催されました。本セミナーでは、3年間にわたる同研究所とJICAとの共同研究の一年次成果として出版された5本の論文に基づき、アラブ諸国の今後について議論する目的で実施されました。この中には、JICA研究所の結城貴子研究員を代表とする研究チームの論文も含まれています。同論文では、中東の最貧国であるイエメンを事例に取り上げ、教育機会の衡平性と学習成果に関し他国との比較および国内差の分析を行い、教員の適切な配置、コミュニティ参加による学校運営の透明性確保と補助金配布、既存のデータを活用したモニタリング制度の機能化の重要性を説いています。

本セミナーのパネリストとして、ブルッキングス研究所の副所長であるKemal Dervi?氏、本共同研究の主幹である上級研究員 Hafez Ghanem氏、世界銀行中東北アフリカ局副局長Inger Andersen氏、米国国務省主席エコノミストHeidi Crebo-Rediker氏、そしてJICAからは、中東・欧州部の肥沼光彦部長等が登壇しました。
冒頭で、Dervi?氏が共同研究事業の説明を行った後、続いてGhanem氏が各々の論文を紹介しました。同氏は、アラブの春はアラブ諸国の経済成長における透明性の欠けたガバナンス、衡平、社会的公正の欠如が起因となったという見解を提示しました。その代表的な例として結城研究員の論文に言及し、教育における質の低さは、インクルーシブな成長の妨げになっていると指摘しました。また、若者の失業および起業家精神の不足も、教育機会の衡平性、市場ニーズとの関連性、基礎的学習の質に起因することや、教育制度改善の重要性についても強調しました。最後に改めてイエメンを例として取り上げ、各学校の現状や教員のモニタリング制度の必要性を説きました。

JICAの肥沼部長は、教育セクターの支援も含め、日本の支援は現地のオーナーシップを促進するよう努めてきたことを強調し、発展途上国への支援を進めていく中で、ガバナンスや透明性が培われるのではないかと述べました。
Crebo-Rediker氏は、人間が誇りを持って従事できる仕事へとつながるチャンスとなる要因は教育であり、アラブ諸国が今直面している問題の大きな背景となっていると指摘しました。また、同氏は雇用、教育、若者、女性、アカウンタビリティすべてが相互に深く関連していることにも言及しました。

本セミナーの最後に、透明性と民意を確保できる新しい民主的制度の構築支援が、ドナーにとっては今後の取り組みの鍵になり、これは教育における質の向上にも当てはまることから、ドナーが民主的制度のもとでインクルーシブな成長、社会的公正へ向けて相互に協力していく重要性がGhanem氏により強調されました。

ブルッキングス研究所での発表後は、世界銀行本部や、「教育のためのグローバル・パートナーシップ (Global Partnership for Education: GPE)」本部を訪問し、イエメン担当官等に論文の紹介をするとともに、同国の新しい教育戦略やドナー支援の方向性について意見交換を行いました。

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開催情報

開催日時:2013年1月31日(木)
開催場所:米国、ワシントンD.C.

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