JICA研究所が取り組む、気候変動研究

2012.11.29

11月26日より12月7日までカタールのドーハにおいて、国連気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)が開催されています。本会合は、先進国に温室効果ガスの排出削減を義務付けた京都議定書が今年末で期限が切れることから、第2約束期間のルール作りを行う節目の会議となります。また、現行制度では削減義務のない米国、中国、インドなどの排出大国や、発展途上国を含むすべての国が参加する新たな枠組みづくりを2015年までに議論を終え、2020年までに実施に移す話し合いも進むものと思われます。

地球規模での環境劣化・破壊は、人々の生活基盤を脅かす一大要因となっています。特に気候変動の影響による干ばつや洪水などにより、人々の生活を脅かしつつあります。開発途上国の貧困層は、農村部、都市部を問わず災害に対し脆弱な地域に住んでいることが多く、負の影響を最も受けやすいと言えます。JICA研究所では、自然科学分野で蓄積された知見や方法をも取り入れながら、援助の現場での経験やデータを踏まえつつ、開発途上国における緩和策推進の方法、そして気候変動への適応策の策定に関する研究を進めてきました。

<JICA研究所の気候変動に関する研究の紹介>

①気候変動がもたらすリスクへの対応

  • 『ケニア農村部における天候リスク対応策の実証研究』

開発途上国で貧困層の多数が従事する農業のリスクは、その多くを天候リスクに大きく影響され、要因に負っており、対処法としては、従来からの灌漑、農作物多角化、互助組織などが導入されてきました。しかし、2007年以降、度重なる旱魃の影響で、世界の農業生産量は減少傾向にあり、特に貧困層の生活を脅かしています。そうした現状を踏まえ、リスク対応手段としての保険への関心が世界的に高まっています。本研究では、ケニアを事例としてとりあげ、天候インデックス型保険導入の可能性を検討しており、2013年に成果を公表の予定です。

② 途上国における気候変動の緩和策と適応策

  • 『開発途上国における気候変動適応策と緩和策の研究』
  • 『JICA事業による温室効果ガス削減効果に関する研究』

気候変動への適応策と緩和策の2つの部分からなる本研究のうち、適応策に関する研究では、アジア・アフリカ諸国が気候変動によって受ける諸影響を予測し、地域社会がこれらに適応するための方策と、それに対する先進国や国際機関による支援の方向性を提示することを目的としています。緩和策に関する研究では、成長を続けるアジア地域の低炭素化に向けた政策実施に当たっての必要な具体策を明らかにするとともに、従来の開発プロジェクトの緩和効果を評価し、ドナーが取り組む方向性をも検討しています。気候変動適応策と緩和策の研究成果は2冊の本にまとめられており、JICA事業による温室効果ガス削減効果に関する研究は現在ワーキングペーパーとしての発刊を準備中です

  • 『気候変動がアジア大都市に与える影響の研究』

世界銀行およびアジア開発銀行とともに進めてきた、気候変動がアジア沿岸部の大都市に与える影響に関する研究では、JICA研究所はマニラ首都圏のケースの研究を担当し、研究成果をまとめました。3機関の研究成果(マニラ首都圏、バンコク、ホーチミンシティ他)を統合した報告書は、世界銀行から発表されています。

<気候変動に関する研究成果>

①書籍

  • 『Climate Change Mitigation and International Development Cooperation』
     編者 藤倉良、豊田知世
     2012年4月刊行
  • 『Climate Change Adaptation and International Development: Making Development Cooperation More Effective』
     編者 藤倉良、川西正人
     2010年11月刊行

②ポリシーブリーフ

  • 『No.7 開発途上国における気候変動緩和策の推進に向けて』
     著者 藤倉良、豊田知世
     2012年1月刊行
  • 『No.3 開発途上国における気候変動適応策の効果的推進に向けて』
     著者 藤倉良、川西正人
     2010年12月刊行

③その他刊行物

  • 『気候変動がアジア大都市に与える影響の研究』(マニラ首都圏の事例)
     著者 武藤めぐみ
     2010年9月刊行

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