JICA研究所、ハンガリーのブダペストで開催されたGDN第13回年次会合で災害に関わるサイドイベントなど実施

2012.06.29

6月16日から18日まで、ハンガリー、ブタペストに所在するハンガリー科学アカデミーと中央ヨーロッパ大学で、GDN(Global Development Network)の年次会合が開催されました。 JICA研究所からは、細野昭雄所長、澤田康幸客員研究員(東京大学教授)、林薫JICA研究所GDN-Japanアドバイザー(文教大学教授、GDN理事)、島田剛企画課長(GDN-Japan事務局長)が出席しました。

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細野昭雄所長

GDNは、1999年に世界銀行が主導して立ち上げた世界的な知識ネットワークです。開発政策と調査研究の連携強化による成果の向上を、新たな知識の創造・共有や情報の交換、人材育成などを通じて行うことを目指しています。今回のテーマは「都市化と開発(Urbanization and Development: Delving Deeper into the Nexus)」です。現在、世界の人口の約半数が都市で生活するという未曽有の都市化状況になっており、特に、環境、貧困、治安、住居・土地問題、防災への対策、あるいはこれらに共通するガバナンスなど様々な面で問題をかかえており、都市化と開発問題を多面的に議論することを目的に開催されました。

今回の第13回会合はJanos Hovariハンガリー外務国務大臣、John Shattuck中央ヨーロッパ大学長の挨拶から始まり、Saskia Sassenコロンビア大学教授の基調講演が続きました。基調講演の中でSassen教授は、世界の都市化に伴う環境負荷など多面的な課題を指摘しました。

二日目にはJICA研究所のサイドイベントが開催され、Alan Winters GDN理事長(サセックス大学教授)が司会に立ち、細野昭雄所長が「都市化と災害」と題して東日本大震災、阪神大震災など日本の経験から、日本の都市がどのような防災対策を行ってきたかを説明しました。その中で、予算制約の強い途上国における防災対策の一例としてJICAが協力してきた事例を紹介しました。細野所長は途上国の災害後復元力(resilience)をさらに高める努力がさらに必要であると論じ、ポストMDGにもそうした観点が反映されるべきであると指摘しました。

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Ravi Kanburコーネル大学教授

これにコメントしたRavi Kanburコーネル大学教授は、災害などリスクに対する対策として早期の対応が必要であると論じ、特にリスクが発生した際に迅速に活用できる財政・金融措置が必要であると強調しました。

このサイドイベントには多くの参加者がつめかけ、活発な質疑応答が行われました。GDNチーフエコノミストのGeorge Mavrotas氏などから、今後もこうしたサイドイベントをぜひ開催してほしいとの強い要望が出されました。

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澤田康幸客員研究員(左)と林薫GDNアドバイザー(右)

また、東アジア開発ネットワーク(EADN: East Asia Development Network)との共催によるパラレルセッションも開催されました。セッションは、林薫JICA研究所GDN-Japanアドバイザーを議長として開催され、澤田康幸JICA研究所客員研究員が「都市災害は農村災害とどう異なるか」をテーマに報告を行いました。この報告の中で澤田客員研究員は、世界で災害が増加している状況について述べ、阪神大震災と中越震災において義援金や政府の補助などの非市場機構や地震保険・資金市場などの市場機構が、どのように震災の影響を緩和したかを比較しました。先進国においても、都市は農村よりも災害に対して脆弱であり、物的インフラのみならず地震保険などソフトなインフラに対する事前の周到な整備が必要である旨を述べました。

また、本会合では細野昭雄所長が国際開発賞の最終審査会(プロポーザル発表、選考)の議長を、林薫JICA研究所GDN-Japanアドバイザーが審査員を各自務め、細野昭雄所長は、授賞式における賞状授与も行いました。この国際開発賞は、宮澤喜一大蔵大臣(当時)が1999年に提唱したもので、開発分野における研究や革新的な開発プログラムを発掘・助成するために、日本政府の資金により授与されているJapanese Award for Most Innovative Development Project(プロジェクト部門)および、Japanese Award for Outstanding Research on Development(リサーチ部門)の両賞、ならびに他国政府・団体等の資金により5つのテーマ別に優秀な研究を表彰するMedals for Research on Development(メダル部門)で構成されているものです。

日本賞の受賞者にメダルを授与1.jpg

授賞式の様子

本会合ではGDN理事会が行われ、GDN日本理事として林薫JICA研究所GDN-Japanアドバイザーが出席しました。また、地域ネットワーク事務局長会合も開催され、GDN-Japan事務局長として島田剛企画課長が出席し、今後のGDNネットワーク運営について議論を行いました。

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林 薫
GDN-Japan アドバイザー/文教大学教授

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