アフリカ紛争の予防・解決において水平的不平等と政治制度に着目した書籍出版記念セミナーを米国で開催

2014.03.28

JICA研究所において、日米欧アフリカ7カ国の研究者が共同研究したプロジェクト「アフリカにおける暴力的紛争の予防」の成果をまとめた英文書籍「Preventing Violent Conflict in Africa: Inequalities, Perceptions and Institutions」が、英国のPalgrave Macmillan社から2013年10月に刊行されました。この出版を記念して、2014年3月11日と13日に米国のボストンとニューヨークの2都市で公開セミナーが開催されました。

3月11日にボストンで行われたセミナーは、マサチューセッツ大学ボストン校マクコーマック大学院紛争解決・人間の安全保障・グローバルガバナンスプログラムと、ハーバードスクエア・アカデミーとの共催により実施されました。本セミナーには、主に国際関係論や紛争解決などを専門とする研究者・学生が参加し、本書籍の第一編者である峯陽一客員研究員と執筆者の一人である片柳真理元主任研究員からの研究成果発表に対して、高い関心と評価が寄せられました。セミナーでコメンテーターを務めたクレイグ・マーフィー教授(マサチューセッツ大学ボストン校/ウェルズリー大学)は、「HIs、人々の認知、政治制度という三つの視点を緊密に結びつけ、定性・定量の両面から暴力的紛争との関連を分析した本書籍の研究枠組みは大変有効である」と本研究の強みを評価しました。同時に、「紛争影響国政府の決定や自主性を尊重しつつ、開発援助機関などの国際社会は盲目的にそれに従うのではなく、政府の政策自体がより望ましい方向に向かうよう積極的な働きかけを行うべき」と指摘しました。

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会場からは、「本研究では政治的HIsの重要性が強調されているが、アフリカの暴力的紛争には資源が大きく関わっており、資源の配分をめぐる経済的側面が政治に与える影響も認識する必要がある」、「開発援助は政府に向けられがちだが、非政府組織にも支援の手を伸ばしていくべきである」といった意見が挙げられました。

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3月13日にニューヨークで行われたセミナーは、国連開発計画(UNDP)および国連日本政府代表部との共催で行われ、国連機関を中心に多数の実務者が参加しました。冒頭で、国連日本政府代表部次席常駐代表の山崎純大使は、「平和の実現は、日本の開発援助(ODA)の主たる目的であり、ODA大綱でも平和の構築が重点課題として掲げられている」と日本政府の方針に触れた上で、本研究の成果が効果的な援助の実施に有益なガイダンスとなることへの期待を表明しました。また、アフリカ連合(AU)国連代表部のアドニア・アイェバレ平和構築・開発担当シニアアドバイザーからは、アフリカにおける紛争が不平等によってもたらされている現状に触れ、本研究の結果はAUの政策に合致しており、本研究をふまえた紛争予防の実施に期待する旨が述べられました。

UNDPのジョルダン・ライアン総裁補兼危機予防・復興局長が司会を務めたセッションで、峯客員研究員と片柳元研究員による発表が行われ、議論においては、パネリストの一人で本書籍の編者の一人でもある福田パー咲子教授(ニュースクール)が、国際的に議論が進められているミレニアム開発目標後の新たな開発枠組み(ポスト2015開発アジェンダ)と本研究を関連付け、「ポスト2015開発アジェンダ」の枠組み検討においても平和・紛争の問題は重要課題の一つであり、特に民主的ガバナンス、法の支配などが活発に議論されているが、それらの議論は必ずしも暴力的紛争と具体的な政治制度のあり方を掘り下げて分析するところまで深まっていない」と述べました。さらに、本書で共通点を持つ国同士を対にして社会の安定/不安定とHIs、および政治制度のあり方に関する詳細な比較事例分析をしていることの意義を指摘しました。もう一人のパネリストであるオゾニア・オジエロUNDP危機予防・復興局紛争予防ユニット長からは、アフリカにおける紛争の予防・解決にHIsという視点が有効であること、国内における諸集団の協力・合意形成を促す政治制度の構築を重視する本書籍の提言が重要であることなど、アフリカの平和構築・開発に関わる実務者の視点からも、本研究成果が示唆に富むものであるとのコメントが寄せられました。

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開催情報

開催日時:2014年3月11日(火)~2014年3月13日(木)
開催場所:米国 ボストン、ニューヨーク

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