「アジアの国内紛争」をテーマに、JICA研究所とアジア財団がセミナーを共催
2013.07.23
7月16日、JICA研究所は、アジア財団と「アジアにおける国内紛争:海外援助は世界でもっとも長引く紛争を止められるのか」と題した公開セミナーをJICA市ヶ谷で共催しました。
本セミナーは、この4月、両機関による業務協力協定(Memorandum of Understanding: MOU)が締結されてから初めての共催イベントであり、アジア財団がこの6月に公表した研究報告書、“The Contested Corners of Asia: Subnational Conflict and International Development Assistance (アジアにおける国内紛争)”に基づき、JICAの紛争予防・平和構築分野の専門家を交えて意見交換を行いました。
JICA研究所加藤宏所長は冒頭の挨拶で、今後、両機関が、平和構築、環境、ジェンダーなどの幅広い分野で連携を推進していく旨を述べました。続いて登壇したアビゲイル・フリードマン アジア財団シニアアドバイザーは日本語による挨拶の中で、アジア地域の開発支援のために地道な活動を通して協力していく意志を、芭蕉の俳句を引用しながら述べました。
加藤所長
次に、アジア財団の研究報告書についてトマス・パークス ガバナンス・紛争担当地域ディレクターと、スティーブン・ルッド フィリピン・太平洋諸国駐在代表2名が発表しました。パークス氏は、この研究はアジア地域における国内紛争の要因を究明し、紛争地域における援助効果の促進を図ることを目的としていると述べ、アジアの場合、紛争の多くは脆弱国家ではなく、比較的安定した経済発展を遂げている中所得国で起きていることから、従来とは全く異なった取り組みが必要であると強調しました。続いてルッド氏は、フィリピンのミンダナオの事例を取り上げ、援助プロジェクトの多くが平和と制度変革の貢献を謳っているにも関わらず、実際には貧困削減がどのように平和に繋がるのかの分析が曖昧で、実証やモニタリングを欠いていると指摘しました。
最後にパークス氏は、この研究の成果に基づくドナーへの提言として、国内紛争が起きている地域で、貧困削減だけでなく平和構築に資するような情報・知見を組織的に蓄積すること、政治的・制度的な変化についてのモニタリング・実証を強化すること、現地の情勢変化に対応できる柔軟なプログラム作りを進めることなどを挙げました。
続いてパネルディスカッションでは、今後のアジアにおける紛争予防・平和構築における有効なアプローチについて議論されました。パークス氏とルッド氏に加え、パネリストとして、JICAから経済基盤開発部落合直之参事役、石川幸子国際協力専門員、および研究所客員研究員の峯陽一教授(同志社大学)が参加しました。落合参事役からは、パークス氏からの提言のいくつかを実際に体現している好例として、ミンダナオでの日本政府・JICAによる支援を紹介しました。J-BIRDと呼ばれる社会開発支援は、和平交渉を支えるICG(国際コンタクト・グループ)、現場での和平履行をモニタリングするIMT(国際モニタリング・チーム)と連携し、和平プロセス全体を支援しています。石川専門員も、ミンダナオでのJ-BIRD、ICG、IMTの連携の様子や、中央政府からローカルな指導者までの幅広い参加者が意見を交換する機会を提供したことが、全体への相乗効果を生んだことを説明しました。峯客員研究員は、アフリカでもアジアと同様に国内紛争が増えているとして、JICA研究所での研究プロジェクト「アフリカにおける暴力的紛争の予防」の研究成果を紹介し、各国内でのアイデンティティ集団毎の格差(水平的不平等)と政治制度の重要性を指摘しました。
討論の中では、パークス氏が、日本・JICAのミンダナオ支援のような好例を他の紛争地域でも実現できるようなドナーの制度作りが重要と述べたほか、峯客員研究員からは、アフリカでは大規模な国内紛争が突然起こる傾向があるのに対し、アジアでは低強度の国内紛争が長期化する傾向があるという指摘がありました。その他に、平和構築の進展を実証する難しさ、外部者が果たす役割の可能性と限界、政治制度作りの複雑さなどが議論されました。モデレーターを務めた室谷龍太郎研究員は、このような課題に取り組む際に「人間の安全保障」の概念が有用ではないかと指摘し、複雑な課題についてアジア財団を含む多くのパートナーと意見交換を続けていきたいと述べました。
パネルディスカッションの様子
左から、室谷研究員、パークス氏、ルッド氏、
落合参事役、石川専門員、峯客員研究員
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
事業事前評価表(地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)).国際協力機構 地球環境部 . 防災第一チーム. 1.案件名.国 名: フィリピン共和国.
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