JICAと世界銀行のグローバルなナレッジを繋ぐ研究の中間報告セミナーを実施 

2014.01.20

JICAは、基礎教育支援における柱の一つとして、各国の教育行政機関、学校現場、コミュニティーと直接関わることにより、実践的な学校運営改善モデルの確立を進めてきました。こうした現場での経験を体系的に発信し、また新しい研究成果をODAによる支援事業の改善に寄与することを目的として、JICA研究所では「学習成果と衡平性に資する教育システム分析ツールの開発研究(SABER研究)」のテーマで、世界銀行との共同研究を実施しています。

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セミナーの様子

その新たな政策分析ツール開発を目的に、研究の対象地域であるブルキナファソとセネガルにて、2013年の4月から5月にかけ、校長、学校運営委員会、保護者会、村役場、県・州教育事務所へのインタビュー調査を実施しました。2013年12月4日には、ブルキナファソの中央・地方政府関係者、ドナー、NGOなどを対象に、その中間報告セミナーを教育省および世銀とJICAで共催しました。

本セミナーの冒頭で、教育省、世銀、日本大使館、JICA事務所の各関係者から  開会の挨拶があり、その後、世銀本部から当セミナーに参加したAngela Demas氏 (シニア教育スペシャリスト)と、澁谷和朗氏(JICA人間開発部職員、当時世銀出向中)が、SABERプログラム全体の進展状況について報告しました。世銀SABERプログラムは、予算と教育成果を結びつける「政策の質」に関し、国際的なエビデンスに基づき開発した指標にてデータベースを構築し、各国との政策対話に活用しようとする試みです。指標の開発は、いくつかの政策領域ごとに進められていますが、学校運営やアカウンタビリティに係る「政策の質」を計測する指標は、本研究の準備期間中にJICAと共同で実施した試行結果も踏まえて改善されたことが報告されました。さらに、「政策実施の質」に関する分析ツールの開発も今後の課題であり、この点についてもJICAとの共同研究の意義がAngela氏から言及されました。

引き続き、「政策実施の質」に関して、共同研究チームを代表して結城貴子JICA主任研究員とワガ大学のDamien Lankoande教授が、ブルキナファソの4州で実施した調査の中間報告をしました。参加型学校運営制度は、法律ができてから約5年経過していますが、政策が実践されているのは、調査対象4州のうちJICA技術協力(「学校運営委員会支援プロジェクト: PACOGES」)の対象州のみであると述べました。さらに、その2州のみに関して分析すると、学校運営制度の実施内容や程度、校長が所有している生徒学力評価調査の情報、地方行政の役割および一般的能力、管理文書の有無などにおける学校や地域間での差があることに触れ、これらの違いと学習成果との相関関係についても結城氏が報告しました。

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結城JICA主任研究員(右)

また、JICA技術プロジェクト(PACOGES)の松谷曜子チーフアドバイサーは、学習成果の情報をコミュニティーと共有しながら活動計画を立て実行していくことが、いかに小学校卒業試験成績の向上と結びついているかについて、パイロット校での事例を挙げながら説明しました。本共同研究のフォーカルポイントである教育省計画局Badini 氏からは、基礎教育戦略(PDSEB2012-2021)の実施状況、中央・地方レベルでの実施モニタリング・メカニズムの現状とキャパシティ開発への課題などについての発表がありました。最後に、PACOGESフェーズ2計画調査団の原雅裕氏は、JICAが「機能する学校運営委員会(COGES)」モデルの全国普及や、地方自治体のCOGES調整機能の強化の支援を行っていく予定であることを説明しました。

こうしたJICA事業を通じた政府教育戦略の実施やモニタリングの改善に寄与するため、中間報告セミナーで得られた多様な意見と情報を踏まえ、共同研究チームは今後最終報告書を作成する予定です。さらに、この試行経験を生かしながら、新たな教育システム分析ツールの有用性や、その結果の意義を広い層に発信するための研究論文も作成することになっています。

開催情報

開催日時:2013年12月4日(水)
開催場所:ブルキナファソ

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