研究所の「アフリカにおける暴力的紛争の予防」研究に関する書籍出版記念セミナーを3カ国で開催

2013.12.27

2008年から2013年の5年間、JICA研究所において日米欧アフリカ7カ国の研究者が共同研究したプロジェクト「アフリカにおける暴力的紛争の予防」の成果をまとめた英文書籍“Preventing Violent Conflict in Africa: Inequalities, Perceptions, and Institutions”(アフリカにおける暴力的紛争の予防:不平等・認識・制度)が、英国のPalgrave Macmillan社から今年10月に刊行されました。この出版を記念して、12月9日から12日にかけて出版記念セミナーを、アディスアベバ(エチオピア)、ブリュッセル(ベルギー)、ロンドン(英国)の3都市で開催しました。

本研究プロジェクトは、民族・宗教・文化などを共有するアイデンティティ集団間の政治・経済・社会・文化的地位の不平等、すなわち「水平的不平等(Horizontal Inequalities: HIs)」に着目したアフリカにおける暴力的紛争についての研究です。特に、①統計データに見られる客観的なHIsと、人々が主観的に認知するHIs(自らが属するアイデンティティ集団の政治的・経済的・社会的・文化的立場をどのように認識しているか)の相違、②政治・経済・社会など多様な側面を持つHIsの中でも政治的HIsの重要性と、それを条件づける政治制度のあり方の二点が暴力的紛争の発生に及ぼす影響を重視し、アフリカ10カ国の事例分析をふまえた紛争予防のための政策提言を行っています。

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12月9日アディスアベバ

出版記念セミナーは、12月9日にアディスアベバ、11日にブリュッセル、12日にロンドンで実施され、いずれのセミナーでも、研究プロジェクト代表を務め書籍の第一編者である峯陽一JICA研究所客員研究員(同志社大学教授)が書籍の全体概要を紹介し、アディスアベバとブリュッセルでは著者の一人である片柳真理元JICA研究所主任研究員が、ロンドンでは編者の一人であるフランシス・スチュワート英国オックスフォード大学名誉教授が、それぞれ政策提言や主観的HIsに関する調査結果の詳細を発表しました。

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12月11日ブリュッセル

アフリカ連合(AU)の本部のあるアディスアベバでは、在アディスアベバのアフリカ各国大使館、エチオピア政府機関、国際機関、研究機関、NGOなどの関係者が出席しました。その中には事例分析対象国からの参加もあり、それぞれの具体的経験に基づいて、書籍が提示した紛争予防のためのアプローチの重要性、過去の植民地政策の影響や豊富な資源の配分を巡る争いといったアフリカに顕著な問題とHIsの関係など、活発な議論が交わされました。

一方、欧州連合(EU)の本部があるブリュッセルでのセミナーは、同地のシンクタンクFriends of Europeとの共催で、またロンドンでは、Overseas Development Institute(ODI)との共催によって開催されました。ブリュッセルでのセミナーには、EUや国連、研究機関、NGOなどの関係者が参加し、この研究成果をEUやJICAなどの実際の事業においてどのように活用できるかといった事項に強い関心が寄せられました。ロンドンでは、大学やNGOからの参加者を中心に、主観的HIsの把握や主観的HIsと紛争の相互関係、また政策提言の一つである地方分権化の有効性とその課題など多くの質問が寄せられ、発表者との間で活発な意見交換が行われました。

同様のセミナーは、今後、国連本部がある米国・ニューヨークでの開催を予定しています。

開催情報

開催日時:2013年12月9日(月)~2013年12月12日(木)
開催場所:エチオピア、ベルギー、英国

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