競争と協力による質向上を:JICA研究所北野副所長が中国の対外援助に関するセミナーで講演

2014.12.04

2014年11月26日、中国商務部国際貿易経済合作研究院国際発展合作研究所(Institute of International Development Cooperation, Chinese Academy of International Trade and Economic Cooperation: CAITEC)とJICA中国事務所の共催により、「中国の対外援助額推計」についてのセミナーが北京で開催されました。本セミナーで、JICA研究所北野尚宏副所長が、国際開発における日中間の競争と協力をテーマに講演を行いました。

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講演を行う北野副所長

北野副所長は講演の中で、本年6月に発刊された原田幸憲研究助手との共著であるJICA研究所ワーキングペーパー『Estimating China’s Foreign Aid 2001-2013』に基づき、中国の対外援助額の推計結果を発表しました。中国の対外援助額は、中国政府の最新の対外援助白書でも、複数年度の承諾額累計しか公表されていません。その中で、本推計は、経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)が定めた政府開発援助(ODA)の定義に基づき、中国の対外援助額を、純額(ネット)及び総額(グロス)ベースで、二国間だけでなく多国間援助分を含め推計した点が大きな特徴となっています。推計の結果、中国の対外援助は、2001年の約7億ドルから2013年約71億ドルへと12年間で約10倍になり、DAC加盟国との比較では、フランスに次いで第6位まで順位を上げていることを示しました。

さらに、援助受入国が中国の対外援助やその他の開発資金をどのように利用しているのか、スリランカなどの事例を挙げて説明するともに、現場レベルで日中間のプロジェクトが近接しつつある現状について、アフリカの農業セクター等の事例を挙げて紹介しました。また、発表のまとめとして、60周年を迎えた日本のODAの歴史の中で、日本が二国間だけでなく、多国間のチャネルも通じて中国の改革開放を支援してきたことを指摘し、援助受入国としての中国の経験が、同国の対外援助活動に活かされている可能性を指摘しました。

パネルディスカッションでは、Christophe Bahuet 国連開発計画(UNDP)北京事務所長及び毛小菁(Mao Xiaojing) 国際発展合作研究所副所長が、発表に対するコメントを行いました。その中では、今回の推計が、中国政府商務部以外の対外援助額や多国間援助も推計し、DAC加盟国のODAとの比較ができるようになった点で意義があること、援助受入国の側に立った視点による示唆の重要性などが、指摘されました。最後に、王?(Wang Luo)国際発展合作研究所所長がセミナーを総括し、中国は、経済成長を遂げる中、国際社会において応分の責任を果たすため、対外援助を質量ともにさらに充実させようとしており、日本を含めたDAC加盟国の経験から多くを学ぶことができるとの考えが述べられました。

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セミナー参加者

セミナーには、中国国際貧困削減センター(IPRCC)、北京大学、清華大学、農業大学、UNDP、米国国際開発庁(USAID)、在中国オーストラリア大使館、在中国EU代表部、スイス開発協力庁(SDC)、ドイツ国際協力公社(GIZ)等の中国人研究者や国際機関、大使館関係者等約60名が参加し、活発な質疑応答、意見交換が行われました。

開催情報

開催日時:2014年11月26日(水)
開催場所:中国、北京

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