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東アジアの二つの金融危機と異なる結果:「Two Crises, Different Outcomes: East Asia and Global Finance」を刊行

2014.12.22

JICA研究所の研究成果に基づく英文書籍「Two Crises, Different Outcomes: East Asia and Global Finance」が、12月18日に米国のコーネル大学出版局から刊行されました。この本は、JICA研究所が2010年7月から2014年3月に実施した研究プロジェクト「東アジア通貨危機からの回復の政治経済学」の成果であり、アジア諸国と米国の研究者が参加しています。

政策研究大学院大学の恒川恵市教授(元JICA研究所所長)とカリフォルニア大学バークレー校のT・J・ペンペル教授により編集された本書は、1997−98年のアジア金融危機と2008−09年の世界金融危機を取り上げ、次の二つの問題に全体で取り組んでいます。一つは、97−98年危機が東アジア諸国に甚大な経済的損失をもたらしたのに対し、08−09年の危機の影響が軽微にとどまったのはなぜか、もう一つは、東アジア諸国が世界金融危機を乗り越えたことは、第二の「東アジアの奇跡」を予兆するものなのか、という問いです。

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これらの問題を分析するにあたり、著者達は五つの鍵となる要素に焦点を当てています。第一に、国家の開発戦略とグローバル金融の力との衝突の結果、二つの危機は発生したという理解です。第二は、東アジアでは高水準の投資および政府・ビジネス間の密接な結び付きが、経済成長を可能にしたと同時に、アジア危機の発生を招くほど、各国経済を脆弱にしていたという事実です。また、焦点の三つ目は、東アジア諸国が1997−98年と同様の危機の再発に備えて、経済のレジリエンスを高めるために予防的な措置を取ってきた点に、四つ目は、世界金融危機がアジア危機と異なり、米国や欧州諸国の経済からの内生的な危機であった点に、それぞれ当てられています。そして最後の焦点として、東アジア諸国が世界金融危機後に経済的なレジリエンスを発揮したことは、この地域が世界経済のエンジンとなるような持続的成長を再び遂げることを意味するのかという問題です。

本書に収められた各章は、東アジアの一ヶ国または複数国の政治経済分析を行っています。JICA研究所から参加した恒川教授と岡部恭宜主任研究員は、それぞれ日本と韓国の事例および韓国とタイの事例を取り上げて比較研究をしています。

各章の分析は、東アジア経済の今後について、短期的、中期的には明るいものであることを示していますが、中長期的に見れば、各国は高齢化社会、中所得国の罠、富の再分配や政治的不安定の問題を抱えており、本書は過度の楽観視に警鐘を鳴らしています。

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