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「ポスト2015年」時代における新興国と先進国の役割とは:ドイツ開発政策研究所(DIE)と共催シンポジウムを開催

2015.03.25

2015年3月19日、JICA研究所はドイツ開発政策研究所(DIE)と共催シンポジウム「ポスト2015年開発アジェンダへの視点:新興国と先進国の役割」を開催しました。

ポスト2015年開発アジェンダに関する国際的な議論が活発化する中、開発援助分野における中国などの新興国の役割に注目が集まっています。JICA研究所は新興国の開発援助に関する研究を実施しており、研究交流を深めているDIEと共同で、新興国援助の動向や特徴、新興国が今後の国際援助秩序形成に果たす役割に関する研究発表を行いました。そして、中国、メキシコ、南アフリカからの研究者や実務家などを交えて、先進国と新興国双方の視点から議論を行いました。

まず、ショルツDIE副所長は基調講演において、ポスト2015年の開発目標である「持続可能な開発目標(SDGs)」は、「ミレニアム開発目標(MDGs)」と比較してより多様な開発目標を掲げており、新興国ドナーの台頭によって、開発問題に関わるアクターが国内的にも国際的にも増加することを指摘しました。その上で、多様なアクターの知識を動員できるような革新的な政策と政策協調のメカニズムの構築とともに、政策実施能力の向上が重要になると主張しました。次に、佐藤仁東京大学教授(元JICA研究所客員研究員)は、各国の援助政策や援助機関のあり方は、国内外の影響を受けて、長い時間をかけて形成されるものであり、その歴史的プロセスを検討することが、援助活動の現状と将来を考える上で重要になると説明しました。

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ショルツDIE副所長

新興国の開発協力をテーマとしたセッション1では、北野副所長が中国の対外援助について発表しました。北野副所長はOECD開発委員会(DAC)の基準に準じた中国の援助推計を提示したうえで、カンボジアなどの援助受け入れ国が、先進国と中国の援助を戦略的に使い分けている実態を紹介しました。続いて、下村恭民法政大学名誉教授が、日本・中国・タイの事例に基づいて、援助受け入れ国は援助を受けた経験と自国独自の経験・知恵を融合させて新しい知識を創造していること、援助国となった際にはこうした知識を活用した援助を展開し、開発援助アプローチの多様性に貢献していることを指摘しました。最後に、ブラッチョ・メキシコ開発協力庁長官補佐官が、南南協力に関する発表をました。同氏は、南南協力の理念が時代遅れになっていることを指摘したうえで、新興国は開発協力において、先進国とは異なるとはいえ責任を負っていることを自覚すべきであり、「南」側はそれを踏まえた新たな南南協力の理念形成を図るべきだと主張しました。

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セッション2の様子

続いて行われたセッション2では、今後の途上国開発や開発協力における新興国の役割について中国、南アフリカ、ドイツ(DIE)の研究者が発表しました。新興国側からは、今後も先進国が開発援助の主要な責任を担うべきだとの意見や、「共通だが差異のある責任(Common but Different Responsibility: CBDR)」原則がポスト2015年開発アジェンダの理念としてSDGsに明記されるべきであるといった主張がなされました。これに対してDIEからは、新興国が国連による南南協力への支援拡大や国連構造改革を主張しているにもかかわらず、限定的な財政的貢献やビジョンの欠如によって大きな影響力を持つには至っていないことや、SDGsを巡る交渉における新興国の立場は、一枚岩ではなく極めて多様であることが指摘されました。

最後に行われた総括ディスカッションでは、今回のシンポジウムが、先進国と新興国の研究者・実務者が多様な見解を提示しあいながら学びあう貴重な場となったことを評価する意見、最貧国を含む援助受け入れ国の研究者や実務家も交えて議論を継続していくことが重要だとする見解が出されました。モデレーターを務めた下村名誉教授は最後に、今回のシンポジウムでの議論を踏まえた上で、新たな開発援助をめぐる枠組みづくりに向けて、引き続き議論を継続していく必要性を述べました。

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参加者一同

開催情報

開催日時:2015年3月19日(木)
開催場所:JICA市ヶ谷ビル

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