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アメリカCSISと初の共同研究:イノベーションで「質の高い成長」を目指す

2015.08.17

JICA研究所は2015年7月、アメリカ有数のシンクタンクである戦略国際問題研究所(CSIS)と「途上国の持続可能な開発と貧困削減に寄与するイノベーション」をテーマにした共同研究プロジェクトを立ち上げました。JICA研究所とCSISとの共同研究は初めてです。

アジア諸国は、安価な労働力を武器に、「世界の組立工場」として中進国(中所得国)へと成長を遂げました。しかし近年、経済成長が停滞する「中進国の罠」に陥り、成長への新たな道を模索しています。こうした中、経済成長の原動力として注目が集まっているのがイノベーションです。科学技術を活用したイノベーションは、日本もアメリカも得意とするところです。貧困削減や持続可能な開発の分野でも、イノベーションによる課題解決が模索されはじめています。

議論を進める北野副所長とCSISのダニエル・ルンデ氏

議論を進める北野副所長と
CSISのダニエル・ルンデ氏

今回の共同研究では、イノベーションがアジアの中進国の課題解決に果たす可能性を検証することを目指しています。その中でも特に、3Dプリンターなどを備えた市民工房「ファブラボ」と、社会システムとITを融合させた安心・安全な都市・コミュニティづくり「スマートシティ」に焦点をあて、その可能性を探ります。

ファブラボは、市民が自由に使える3Dプリンターやレーザーカッターなどの工作機械を備えた施設で、インターネットを通じて共有されたデータを利用し、地域や個人の課題を解決するものづくりを目標としています。途上国においてファブラボは、貧困層が直接使える施設・ツールでもあることから、産業振興や雇用の拡大、さらに貧困削減につながるのではと、期待されています。

たとえばフィリピンでは、JICAの青年海外協力隊員の提案が契機となり、フィリピンの貿易産業省と科学技術省、州立ボホール島大学、JICAが共同で市民工房「ファブラボ・ボホール」を設立。貿易産業省は工房を活用し、地元中小零細企業の支援を行っています。2014年5月に同工房を拠点に開かれたファブラボの国際会議には、ベニグノ・アキノ3世大統領が参加して、産業振興や貧困削減への期待を語り、大きな注目を集めました。

一方、スマートシティは、社会インフラとITを融合させることで、社会やコミュニティの最適化を図ろうという考え方で、環境を含めて最適化されたスマートな社会機能、サスティナビリティのある社会機能、しなやかで回復力を持ったレジリエントな社会機能の視点が重要とされます。スマートグリッドをはじめとするエネルギー供給の最適化にとどまらず、安心・安全を前提に、交通、医療、教育など幅広い分野のイノベーションと連携が重要になります。日本では、横浜市や北九州市などがスマートシティの取り組みを進めています。

途上国では、経済成長とともに、都市化と適切な都市・コミュニティづくりが大きな課題となっており、スマートシティの考え方には、課題の解決と成長につながる可能性があります。

JICAも設立にかかわったファブラボ・ボホール

JICAも設立にかかわった
ファブラボ・ボホール

2015年7月22日と23日の両日、JICA研究所でそれぞれファブラボ、スマートシティを主テーマとした会議が開かれ、研究が本格的にスタートしました。今後、CSISでの会議、フィリピンやインドなどでの現地調査が予定されています。

開催情報

開催日時:2015年7月22日(水)~2015年7月23日(木)
開催場所:JICA市ヶ谷ビル

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