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「障害と教育」研究プロジェクト成果をカンボジア、タイ、中国で発表-亀山研究員ら

2016.12.05

JICA研究所「障害と教育」研究プロジェクトを進めるJICA研究所の亀山友理子研究員らが2016年10月25日、調査対象国の一つであるカンボジアで教育関係者らを対象に成果発表のセミナーを開きました。亀山研究員らはまた、タイや中国で相前後して開かれた国際会議でも研究成果を発表しました。

カンボジアのセミナーでは、研究代表者の黒田一雄早稲田大学教授(JICA研究所客員研究員)が、「障害と教育」の国際的潮流を説明、亀山研究員が研究の背景や調査手法などを説明しました。続いて、調査結果について、黒田教授と研究分担者のダイアナ・カルティカ氏(早稲田大学大学院)が報告。障害児が障害を持たない子どもと同じ教室で学ぶインクルーシブ教育に対して、カンボジアでは全体的に肯定的な認識が多く、そこには障害児教育のトレーニングを受けた経験や障害児を教えた経験の有無による違いはないこと、インクルーシブ教育の是非に関する教員の認識は障害の種類によって異なり、特に重度の視聴覚障害児へのインクルーシブ教育には否定的な認識を持つ傾向が、先進国と比較して非常に大きいという結果を報告しました。

ブラインドサッカーを体験するカンボジアの小学生

ブラインドサッカーを体験するカンボジアの小学生 (写真:久野真一/JICA)

JICA研究所の内海悠二助手が非就学障害児の実態把握に関する調査の結果を説明しました。将来退学する可能性が高い就学児童の割合は非障害児と比較して障害児グループのほうが多く、退学する時期は小学校1年次である割合が高いこと、また障害児がフォーマル教育に参加しない理由は学校以外の事由であることが多いことや、女性の障害児は男性の障害児に比べて学校から入学を拒否される可能性や家庭内外での労働のために学校に行けない可能性が高い、と報告しました。

研究成果の発表後は、カンボジア教育省のSam Sideth教育副局長、NGO関係者が登壇し、議論を深めました。セミナーについて、亀山研究員は「研究者と実践者、そしてカンボジア政府関係者が一堂に会して現在進行中のプロジェクトから得た経験や研究結果を共有することができた。それらの経験や結果を政策レベルにどのように反映させていくかを考える機会を各プレーヤーに与えることができたという点で、多いに意義があったと思う」と話しています。

亀山研究員は、10月26日~28日、タイのバンコクで開かれた「第18回ユネスコAPEID(アジア・太平洋地域教育開発計画)国際会議」にも参加、モンゴルの障害児教育に対する障壁について、教員と保護者の意識調査についての分析結果を発表しました。設備や備品の不足、学校財政や給与・手当などの金銭的な不足が障壁であるとの意識が強いことなどから、インクルーシブ教育の推進には、こうした課題の克服や研修、保護者や他教員との協力、特別支援学校と通常学校との協力などが必要であると示唆しました。

さまざまな立場の人が参加したカンボジアでのセミナー

さまざまな立場の人が参加したカンボジアでのセミナー

会場には、ユネスコ、国際NGO、セーブ・ザ・チルドレン、カンボジアのNGOの実務者約20名の参加があり、教員研修の効果に関する質問、重度の障害を持った児童に関する教育の在り方、国際教育協力の中におけるインクルーシブ教育の資金不足や主流化への問題について議論されました。黒田教授が本研究案件は、エビデンス(科学的根拠)の少ない途上国における障害児教育について研究することによって、政策対話を活性化することにつなげることを目標としていると説明し、カンボジア教育省が開発パートナーの調整役として正式にインクルーシブ教育部署を設立したことや、モンゴルでのJICAプロジェクトの内容についても紹介しました。

なお、亀山研究員は、カンボジア、タイでの発表に先立ち、8月21日~24日に中国・北京で開催された世界比較教育学会連合大会にも参加し、同様の研究成果を発表しました。

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