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ユネスコ・グローバル教育モニタリングレポートへのコンサルテーションを実施

2017.07.21

2017年6月25日、JICA研究所の主催で、人の移動・避難と教育の問題を扱う2019年版「ユネスコ・グローバル教育モニタリングレポート(UNESCO Global Education Monitoring Report: GEMレポート)」へのインプットを行うためのコンサルテーション会合を、日本比較教育学会の開催に合わせて東京大学で行い、大学教授や研究者を中心に約40人が参加しました。

GEMレポートは、2002年よりユネスコが毎年発行している編集上の独立性が確保されたレポートです。2015年に開催された「世界教育フォーラム」のインチョン宣言に基づき、持続可能な開発目標(SDGs)における教育関連目標、特にゴール4(すべての人にインクルーシブかつ公正な質の高い教育を確保し、生涯学習の機会を促進する)の進展をモニタリングする役割を担っています。

6月25日に東京大学で研究者らがGEMレポートについて議論

6月25日に東京大学で研究者らがGEMレポートについて議論

冒頭、JICA研究所の萱島信子副所長は「日本の第一線で活躍する研究者のご協力を得て、GEMレポートのようなユネスコのフラグシップレポートの作成に貢献する機会を得られたことは大変光栄」とあいさつしました。

続いて、GEMレポートチームのアーロン・ベナボット局長が、2019年版のテーマである「移動・避難と教育」について説明。一言で「移動」といっても、紛争や災害などで強制的に移動せざるをえなかった難民もいれば、留学や仕事を求めて自分の意志で国境を越えて移動した人、さらに国内で移動した場合や避難民になった場合もあるなど、その実態は多種多様であり、統一的な定義が困難であることを指摘しました。

次に、日本の研究者5人が発表。黒田一雄早稲田大学大学院教授(JICA研究所客員研究員)が来日した外国人留学生と日本人留学生の意識の変化、芦沢真五東京大学教授がアジアと日本の高等教育機関における外国学歴・資格認証と質保証システム、丸山英樹上智大学准教授が日本における移民児童の教育システム、徳永智子慶應義塾大学特任講師がフィリピンからの移民児童の学校教育事例、塩畑真里子セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン海外事業部部長がミャンマーのカレン族の教育カリキュラムの現状について、それぞれの研究の成果を述べました。

これらの発表を受けて、GEMレポートでカバーされていない課題やより重視すべき点などについて、①国際・国内の移動がどのように教育へのアクセスを促進、または妨げるのか、②移動がどのように質の高い教育に影響を与えるのか、③どのような教育政策やプログラムが移住者の教育を改善するのに最も効果的か、④どのようにして移住者や難民自身の意見を移住と教育に対する私たちの理解の向上につなげるのか、の4つの観点から会場全体で議論しました

翌6月26日にはベナボット局長がJICA研究所を訪問し、セミナーが開かれました。JICA研究所の荒川奈緒子リサーチ・オフィサーが司会を務め、ベナボット局長が本年10月に発行される予定の「教育とアカウンタビリティー」レポートの概要について解説し、それに対して、ユネスコがリードするグローバルな枠組みであるSDG-Education 2030運営委員会の共同副議長を務める吉田和浩広島大学教授がコメントしました。

冒頭のあいさつでJICA研究所の北野尚宏所長は、昨年策定したJICA のSDGsについての基本方針(ポジションペーパー)において、開発の基礎となる分野として教育と保健を重視していることを紹介。これまで培ってきた開発経験を生かし、JICAは教育面でもSDGsのゴール達成に重要な役割を果たせるのではないかと述べました。

6月26日にJICA研究所でGEMレポートについて議論したアーロン・ベナボット局長(右)と吉田和浩広島大学教授

6月26日にJICA研究所でGEMレポートについて議論したアーロン・ベナボット局長(右)と吉田和浩広島大学教授

ベナボット局長は、アカウンタビリティーに関する政策や実施は、子どもの学力の向上や教員の欠勤の防止など教育分野のさまざまな課題への解決策とされてきたと説明。同レポートでは、SDGsゴール4の達成に向けて教育分野ではどのようにアカウンタビリティーが果たされてきたかを、政府、学校、教員、市民社会、親、生徒、民間セクター、国際機関の8つの異なるアクターの観点から検証しています。「一部のアクターだけではなく、多数のアクターを考慮したアカウンタビリティーの仕組みを作れば大きな変化を生み出せる。例えば教育の質の課題を教員だけのせいにするのではなく、学校や政府、地域社会など、教員を含む教育に関わるさまざまなアクターがそれぞれの役割を果たせるような環境を整備することが大事だ」と話しました。

これを受けて吉田教授が「現状のSDGゴール4の教育目標は、途上国だけではなく、先進国にとっても非常に野心的な目標で、モニタリングのための指標も『最低限の読み書き計算能力』など定義や測定が困難な指標がある。ドナーによる成果に基づいた資金の提供(Result-Based Financing)の指標の活用についても議論が必要」とコメントしたほか、会場からもさまざまな質問が寄せられ、活発な意見交換が行われました。

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