峯研究所長らがThink 7(T7)Japanサミット「Addressing Crises, Reigniting Sustainable Development, Bridging the G7 and G20」に登壇

2023.08.03

G7 の公式エンゲージメント・グループであり、G7および世界中の主要なシンクタンクから構成される「Think 7(T7)」による「Think 7 Japanサミット」が2023年4月27、28日に開催されました。T7の議長は、東京に拠点を持つアジア開発銀行研究所が務めました。G7を始めとする各国から専門家が集い、5月19〜21日に開催されたG7広島サミットやその後の政策論議を支えることを目的に、多数の提言がなされました。

世界的な課題に対する連携と対話の促進へ

本サミットにおいては、G7とG20による行動の連携とともに、G7・グローバル・サウス間の連携の推進が強調されました。また、ウクライナの復興、ジェンダーに配慮した経済成長、軍縮、核不拡散など、差し迫った課題についてのパネルディスカッションが行われ、共通の課題への対応に向けて、建設的な対話を育み、国際協力を促進することを確認しました。

本サミットは、(1)開発と経済的繁栄、(2)ウェルビーイング(健康・幸福)、環境の持続可能性、公正な移行、(3)より良い未来のための科学とデジタル化、(4)平和、安全保障(人間の安全保障を含む)、グローバルガバナンス、というさまざまな地球規模の課題に対し、解決策を示すことが目的です。JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)からは、峯陽一研究所長と高原明生シニア・リサーチ・アドバイザーが出席したほか、第一線で活躍する専門家や政策実務者らが名を連ねました。

タスクフォース4セッション「Peace, Security, and Global Governance」のパネリストたち

タスクフォース4セッション「Peace, Security, and Global Governance」のパネリストたち

人間の安全保障と国家安全保障の関係性とは

T7Japan諮問委員会の委員を務める高原シニア・リサーチ・アドバイザーは、パネルディスカッション「A Matter of Peace: Security in a World of Polycrises and Interconnections」に参加し、人間の安全保障という概念の発祥と、現在の理解に至るまでの歴史的な経緯を説明しました。人々の生命、生活、尊厳を守ることを中心に据えた概念である人間の安全保障は約30年前に登場したこと、人間の安全保障は核戦争の脅威が大きくなっていた冷戦後に生まれたものの、冷戦期に抑えられていた深刻な国内での民族紛争が新たな脅威としてすぐに台頭したことにより、国家ではなく人間に焦点を当て、人々の尊厳の保護と恐怖・欠乏からの解放を目指す画期的なアプローチとして受け入れられたことを紹介しました。また、暴力的過激主義や国内武力紛争、自然災害、気候変動、感染症といった今日の複合的危機が人間の安全保障を脅かしていると指摘し、その実例としてミャンマーとスーダンについて言及しました。

続けて、地政学的紛争や国家間の戦争は、現在ウクライナで人々の生命、生活、尊厳が容赦なく破壊され、核兵器の使用が懸念されているように、人間の安全保障を脅かすことを説明しました。人間の安全保障を実現するためには、国家安全保障を守ることが前提であり、確立されたルールと共通の理念に基づく力の抑制・均衡のメカニズムが不可欠であると述べました。

最後に高原シニア・リサーチ・アドバイザーは、78年前の広島と長崎での悲劇が示した核兵器の使用がもたらす残酷な結果を忘れないことが重要だと強調。広島と長崎でより多くの国際会議や首脳会議を開催することは、科学がいかに過ちを犯し得るか、いかに想像を超えた形で人々の生命、生活、尊厳を破壊し得るかを思い起こす機会になるだろうと述べました。核兵器不拡散条約(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons: NPT)加盟各国、とりわけ核兵器を保有する5ヵ国による定期報告を実現することにより透明性と説明責任を高め、NPTを維持・強化しなければならないとの考えを示しました。

JICA緒方研究所の高原明生シニア・リサーチ・アドバイザー

JICA緒方研究所の高原明生シニア・リサーチ・アドバイザー

人間開発に対する伝統的・非伝統的な安全保障上の脅威に立ち向かう

峯研究所長は、タスクフォース4セッション「Peace, Security, and Global Governance」でパネリストを務め、軍事侵攻から国家を防衛する必要があるような「伝統的」な安全保障上の脅威に加え、現在では環境、エネルギー、食料、健康、経済、武力紛争など、相互に連鎖する「非伝統的」な脅威が大切になってきていることを指摘しながら、人間の安全保障の概念を取り上げました。また、人間の安全保障は、安全保障の指示対象を国家から個人へと移行させたとし、安全保障の提供者として国家は不可欠で重要でありつつも、民間企業、市民社会、宗教コミュニティー、地方自治体、学校、家族、友人など、多様な人間の安全保障の提供者が存在するため、彼らの相互の連携と協力を強化することが求められると述べました。

JICA緒方研究所の峯陽一研究所長

JICA緒方研究所の峯陽一研究所長

続けて、国連開発計画(UNDP)の2022年特別報告書「人新世の時代における人間の安全保障への新たな脅威」を取り上げ、UNDPの記録上初めて世界の人間開発指数が2年連続で低下した点に触れ、人間の安全保障上の脅威が人間開発に及ぼす影響を示しました。人間の安全保障上の脅威は多様かつ突発的なため、予防・備えから危機への対応、そして最終的な復興に至るダイナミックなプロセスを通じて、コミュニティーがレジリエンスを発揮することが重要と述べました。さらに、国家による安全保障だけでは不十分であり、コミュニティー、国、国際社会の各レベルで人間の安全保障による補完が必要とし、安全保障の提供者として国家以外のアクターの重要性を強調しました。

峯研究所長は発表の締めくくりに、国際法には反映されていないものの、G7とG20の役割が拡大していると述べ、現実をふまえて国連を改革する必要性が高まっていると指摘したほか、国連安全保障理事会はグローバル・サウスの声を適切に反映すべきとの考えを示しました。

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