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プロジェクト・ヒストリー『稲穂の波の向こうにキリマンジャロ—タンザニアのコメづくり半世紀の軌跡』出版記念セミナー開催

2024.05.20

2024年4月12日、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)は、国際協力70周年記念事業として、プロジェクト・ヒストリー『稲穂の波の向こうにキリマンジャロ—タンザニアのコメづくり半世紀の軌跡』出版記念セミナーをオンラインで開催しました。

タンザニアからアフリカへと広がった稲作支援

タンザニア稲作支援に専門家としても関わってきた同書籍の筆者であるJICAタンザニア事務所の浅井誠次長は、「コメを作れるのか?という模索から始まったキリマンジャロ州総合開発計画、農業技術者訓練センターの設立、そしてタンザニア全国、さらにはアフリカ全土へと稲作支援を広げ、半世紀にわたる協力となった。本書では、いかにそれぞれの専門家が現場で答えのない問題に対して奮闘していたか、その姿を紹介したい」と述べ、各章の概要を紹介しました。

筆者であるJICAタンザニア事務所の浅井誠次長

筆者であるJICAタンザニア事務所の浅井誠次長が書籍の概要を紹介

続いて、タンザニア稲作支援にさまざまな立場から携わった3人が加わり、タンザニア稲作支援の歴史を振り返りつつ議論しました。

セミナーに登壇した4人のパネリスト

タンザニア稲作支援にさまざまな立場から携わった経験を持つパネリストが意見交換

モデレーターを務めたJICA経済開発部の内田さや子職員が、まず「JICAの技術協力の特徴と変遷とは?」と問いかけ、タンザニア事務所などで稲作支援を担当してきたJICA経済開発部の鈴木文彦課長は「持続的な成長と人間の安全保障を重視することに加え、自助努力を後押しし、相手国の自主性を尊重して支援する点」と答えました。

JICA経済開発部の鈴木文彦課長

ディスカッションに参加したJICA経済開発部の鈴木文彦課長

また、2008年に国際イニシアティブである「アフリカ稲作振興のための共同体(Coalition for African Rice Development: CARD)」立ち上げに携わったササカワ・アフリカ財団の花井淳一顧問は、「他ドナーが基本的には農家への直接的な支援であるのに対して、日本の協力は農業普及の人づくりや仕組みづくりが中心。協力の期間が終わっても人や仕組みは残るため、時間軸を長くとると日本の協力のほうがインパクトは大きいのではないか」との考えを示しました。

ササカワ・アフリカ財団の花井淳一顧問

ディスカッションに参加したササカワ・アフリカ財団の花井淳一顧問

相手国に寄り添い持続性を確保するために

「成果の持続性という観点ではどんな課題があったか?」という質問に対しては、2002~2004年までタンザニアで援助協調プロセスを担当したJICA緒方研究所の花谷厚主任研究員が回答。「2000年代は援助協調の時代。ドナーは個々のプロジェクトではなく一般財政支援を行うようになったため、日本型プロジェクト支援は批判された。しかし、その中でも技術開発やパイロット事業の試行はプロジェクト型援助の優位性を発揮できる活動と考えられたので、当時実施中だった技術協力プロジェクト「灌漑農業技術普及支援体制強化計画プロジェクト 、通称(タンライス)」を含む日本の稲作支援の有効性を主張した。その一方で、日本のプロジェクトが完全な『スタンドアローン(政府システムから独立した)』案件とならないよう、タンザニアの予算、事業制度に合わせることが求められた」と振り返りました。

JICA緒方研究所の花谷厚主任研究員

2000年代のタンザニアが置かれた状況などを振り返るJICA緒方研究所の花谷厚主任研究員

「現場に寄り添った今後の技術協力の在り方とは?」との問いには、花井顧問は「農業は“儲かってなんぼ”のビジネス。アフリカの農家が何を求めているか、そのリアリティーを理解して支援すべき」、鈴木課長は「農家に採用してもらえる技術を伝えて現場の農家に寄り添うことと、技術普及をより広めるために政府のシステムに寄り添うことの両方が重要」、浅井次長は「新しい発想が出てきたらプロジェクトを方向転換する臨機応変さと柔軟性が必要ではないか」と期待を語りました。

セミナーの詳細と動画は以下からご覧になれます。

プロジェクト・ヒストリー 「稲穂の波の向こうにキリマンジャロ:タンザニアのコメ作り半世紀の軌跡」へのリンク画像

プロジェクト・ヒストリー 「稲穂の波の向こうにキリマンジャロ:タンザニアのコメ作り半世紀の軌跡」(YouTube)

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