『Efficiency, Finance and Varieties of Industrial Policy』
持続可能かつ質の高い成長に向けて、新たな時代の「産業政策」はどのようなものであるべきか。本書は、JICA研究所とアメリカ・コロンビア大学政策対話イニシアチブ(Initiative for Policy Dialogue: IPD)との共同研究プロジェクトの第3弾「産業政策の新しいアプローチ」の成果をもとに発刊されました。
IPDは、コロンビア大学を拠点とする、ノーベル経済学賞受賞者で同大学教授のジョセフ・スティグリッツ氏が率いる政策対話のためのシンクタンクです。今回の共同研究では、世界の持続的な発展に産業政策が果たす役割をテーマに研究が行われました。産業政策は、市場に対する政府の介入であり、古くから政策論争が続けられてきました。近年になり、イギリスの産業革命以降、世界各国で取り組まれてきた産業政策が各国の経済成長を担ってきたことが再認識され、注目が高まりつつあります。
本書の構成は、第1部が産業政策の理論的・概念的背景、第2部で開発金融、第3部で実践と提言となっています。特に開発金融については、日本、インド、ヨーロッパ等における開発銀行のケース・スタディから途上国の開発金融に対する教訓が導き出されており、また、「新しい構造主義経済学」の提唱などがされています。
本書は、スティグリッツ教授と IPD上席研究員であるアクバル・ノーマン氏により編集されました。執筆者は、元世界銀行チーフエコノミストのジャスティン・リン教授、元国連事務総長補のホセ・アントニオ・オカンポ教授(コロンビア大学)、元ブラジル開発銀行(BNDES)チーフエコノミストのカルロス・フェラズ教授、カルロタ・ペレズ教授(ロンドン大学LSE)、などです。
JICA研究所からは、第2部(開発金融)で、島田剛・招聘研究員が「日本の産業政策の制度:開発金融機関、民間セクター、労働市場(Inside the Black Box of Japan's Institution for Industrial Policy: An Institutional Analysis of the Development Bank, Private Sector, and Labor))を執筆しています。また、第3部(実践と提言)で、細野昭雄シニア・リサーチ・アドバイザーが「産業戦略:質的成長を実現する学習社会の形成に向けて(Industrial Strategies: Toward a Learning Society for Quality Growth)」を執筆しています。
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