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No.15 複合危機下における世銀改革の背景と過程-米国政府の対外政策の影響と世銀の対応-

  • #ナレッジ・レポート

気候変動やパンデミックなどの影響で、世界的な貧困削減と繁栄の共有の進捗は大きく停滞し、SDGs達成も多くの指標で困難とされる中、開発資金ニーズの拡大に対応するため、2021年のG20議長国イタリアの下でMDBsの融資能力を高める方策の検討が始まった。地球規模課題への対処を米国の対外政策上の重要なアジェンダの一つと位置づけたバイデン政権は、2022年秋以降、国際場裏において世銀・MDBs改革をリードする役割を果たした。本稿では、世銀・MDBs改革が求められた背景について、開発上の課題、G20での取り組み、そして主要なMDBsの最大出資国である米国の問題意識を考察した上で、世銀がどのように改革の具体化、各施策の導入・実施を図ったかについてその過程を明らかにする。

2022年10月のIMF・世銀年次総会において、日米を含め世銀Gの出資国は、世銀Gの経営陣に改革ロードマップの作成を要請し、その後、ビジョン・ミッション、業務モデル、金融モデル・能力の3分野で検討が進められた。それから2年半の間に、気候変動やパンデミックなど世界が直面する地球規模課題に対し、世銀が“a better, bigger and more effective”(より良く、より大きく、より効果的)に対応できる組織となるため、様々な取り組みが検討・実施された。

他方、2025年1月にトランプ第2次政権が発足し、就任直後から、バイデン大統領の国際協調重視の対外政策から大きく方針転換し、「アメリカ・ファースト」の姿勢を打ち出した。執筆時点においてトランプ第2次政権の公式的な外交方針などはまだ明らかになっていないものの、少なくとも世銀については、「アメリカ・ファースト」の文脈での有用性を認識し、引き続き関与する姿勢を示している。また、世銀もトランプ政権の関心事項に十分に配慮し、ナラティブの中心を従来の地球規模課題への対処から雇用創出にシフトさせるなどの対応を取ることで、米国政府の関与の継続に成功していると言える。

キーワード:地球規模課題、世銀改革、MDBs改革、米国の対外政策、バイデン政権、トランプ政権

著者
宮崎 清隆
発行年月
2025年11月
言語
日本語
ページ
34
開発課題
  • #政治・ガバナンス
  • #経済政策
  • #SDGs
研究領域
開発協力戦略