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No.16 バングラデシュのガバナンス改善へ向けて~都市ガバナンス支援の経験に基づく考察~

  • #ナレッジ・レポート

バングラデシュは2000年代以降、安定した経済成長を遂げてきたが、公共セクターにおけるガバナンスの課題は依然として深刻である。特に、2024年8月に発生した政変は、経済成長の恩恵が社会全体に還元されていない現実を浮き彫りにした。現在、暫定政府は、行政改革委員会をはじめ複数の改革委員会を設置し、抜本的な制度改革を検討している。

本稿は、JICA協力による「都市機能強化プロジェクト」を通して明らかになった都市ガバナンスの課題を整理すると共に、バングラデシュの公務員制度および人材育成システムの課題を考察する。都市ガバナンスでは、法令未整備、財政制度の不明確さ、人事・組織運営の硬直性、市民参加の不安定さ、専門人材不足といった多層的な課題が明らかになった。そして、これらの課題に影響を与える共通要因として、上級公務員(BCS行政職)に過度に依存する中央集権的な人事制度、専門性を重視しないキャリア形成、人材育成システムの不備等、現行公務員制度の構造的特徴が確認された。

これらの考察を踏まえ、本稿は今後の協力アプローチとして三つの方向性を提言する。第一に、地方行政の基盤を成す制度・構造面への継続的支援である。具体的には、法制度整備、財政制度改革、市民参加促進を通じた自治体機能強化に加え、日本や諸外国の知見を共有する国際的政策プラットフォームの形成・活用が求められる。第二に、公務員の政策形成・実行能力を高めるため、実務課題を題材とした問題解決型・実践型研修の導入を通した人材育成支援を強化する必要がある。第三に、公務員制度改革を見据えた専門性強化に資する人事制度の再設計に対する協力である。特に、クラスター制度の導入や専門研修体系の整備が重要である。

本稿で提案する公務員制度改革の方向性は、暫定政府が行政改革委員会を通じて策定した改革案の枠組みとも合致している。今後の改革の具体化と運用支援において、日本の寄り添い型協力の重要性は高まっており、制度・組織・人材の三層にわたる包括的な協力を通じて、バングラデシュのガバナンス強化に貢献していくことが期待される。

キーワード:バングラデシュ、都市ガバナンス、行政改革、公務員制度、人材育成

著者
渡辺 広毅、 安西 尚子、 房前 理恵
発行年月
2026年1月
言語
日本語
ページ
23
関連地域
  • #アジア
開発課題
  • #政治・ガバナンス
  • #都市開発・地域開発
研究領域
開発協力戦略