The Impact of Urban Transportation Investment on Property Values: Evidence from the Jakarta’s Mass Rapid Transit (MRT)
JICA緒方研究所について
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多くの低中所得国では、都市交通インフラが依然として未発達であり、その影響に関する定量的なエビデンスは十分に得られていません。本論文は、インドネシア初の都市鉄道プロジェクトであるジャカルタ都市高速鉄道(Mass Rapid Transit: MRT)が、資産価値に与えた影響を調査したものです。
MRT沿線の商業オフィスと住宅アパートの賃料のパネルデータセットを使用し、準自然的な実験の環境で差分の差分法による推定を用いてMRT開通による影響を評価しています。その結果、MRTの開通により、MRTの駅の近隣エリアにある商業オフィスの賃料には有意な負の影響が生じましたが、住宅アパートの賃料には有意な影響は見られなかったことが分かりました。オフィス賃料への負の影響は、MRTの開業と同時期に賃貸オフィス物件の供給が近隣エリアで有意に増えたことに伴ったものである可能性を論じています。この研究結果は、都市交通の発展によって資産価値が直ちに上昇するとは限らないことを示唆しており、公共交通指向型開発(Transit-oriented Development: TOD)とインフラ整備に向けた土地開発利益還元(Land Value Capture: LVC)による資金調達に取り組む実務者にとって課題となり得ることを示唆しています。
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