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Determinants maintaining healthcare personnel’s motivation during COVID-19 pandemic in Uganda

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ウガンダにおけるCOVID-19パンデミック時の医療従事者のモチベーション維持の決定要因(和訳タイトル)

背景:

さまざまな環境での医療従事者の身体的・心理的健康の維持は、パンデミックに対応可能な強靭な保健システムにとって極めて重要です。COVID-19のパンデミック時、ウガンダでも医療従事者は精神的な面も含めさまざまな困難に直面し、従前からの人材などの医療資源不足がこれに拍車をかけました。本研究では、COVID-19専門病院に指定された三次病院(以下、「本病院」)の医療従事者が直面した課題を把握した上で、COVID-19パンデミック禍での医療従事者のモチベーション維持の決定因子を考察しました。

手法:

本病院に勤務する医師・看護師などの専門職員120人を対象に、構造化質問紙を用いて2023年5~7月にかけて聞き取り調査を実施しました。社会人口統計学的データ、COVID-19の知識、病歴、受けた支援、パンデミック時に直面した課題などの記述分析およびロジスティック回帰分析により、モチベーションに関連する因子を特定しました。心理的影響度合は4段階のリッカート尺度を用いて測定しました。

結果:

回答者のうち、1回目のロックダウン時に勤務していた者は61.7%、2回目では93.3%でした。COVID-19に関する知識は高く、70%以上が質問に正しく回答していましたが、ワクチンの有効性に関してはやや低い正解率でした。医療従事者の32.5%が何れかの時期に検査にてCOVID-19陽性を呈し、25.0%がワクチン接種を躊躇していました。直面した困難としては、感染への恐怖、交通機関の混乱、収入の減少、社会的孤立などが挙げられました。特筆すべきは、92.5%が感染に関連した大きな恐怖を報告したことです。業務継続意欲(モチベーション)と相関を示したのは、年齢(31歳以上 vs. 30歳以下;調整オッズ比[AOR]:10.34、95%CI:1.92-55.74)、職業(医師vs. コメディカル/非医療スタッフ;AOR:11.66、95%CI:1.03-132.22)、技術的・精神的助言(有 vs. 無; AOR:18.87、95%CI:2.55-139.72)、上司/管理者からの情報(有 vs. 無; AOR:12.5、95%CI:2.60-60.42)でした(AORは、後者の選択肢を1とした比)。心理的影響として、家族や友人からの孤立がモチベーションに負に影響していました(有 vs. 無; AOR:0.61、95%CI:0.41-0.92)。

結論

対象の医療従事者の8割以上が、さまざまな困難に直面したにもかかわらずモチベーションを維持していました。医療従事者のモチベーション維持には、金銭的なインセンティブよりも、病院上層部や先輩スタッフによる指導や効果的なコミュニケーションといった技術的・精神的支援が重要であることが示唆されました。パンデミックの中で、医療資源に制約のある環境で医療従事者のモチベーションを維持するためには、包括的な支援システムが不可欠です。今後、長期的なメンタルヘルスへの影響も検討することに拠り、危機に強い医療従事者の支援体制をより明確にできると思われます。

著者
駒澤 牧子、 ミョー・ニエン・アング、 Christopher Nsereko、 齋藤 聖子、 ロバート・セキトレコ、 磯野 光夫、 湯浅 資之
発行年月
2025年1月
出版社
Nature, Scientific reports
言語
英語
ページ
12
関連地域
  • #アフリカ
開発課題
  • #保健医療
研究領域
人間開発
研究プロジェクト