意識と象徴の沖縄アイデンティティ―第5~7回世界のウチナーンチュ大会(2011・2016・2022年) 調査の結果から―
JICA緒方研究所について
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本研究では、1990 年からおよそ 5 年に一度、開催されてきた「世界のウチナーンチュ大会」のうち,過去4回の大会における参加者アンケート調査によって得られたデータを用いて、海外に在住する沖縄系の人びとのアイデンティティを分析しています。
本稿の主題である沖縄アイデンティティをめぐる意識については、第 5 回大会調査(2011 年)から継続的に問いを設け、分析を続けてきました。大会調査は、海外沖縄県系人の意識調査としては、規模と継続性において最大のものです。また、複数の国々に居住するエスニックグループの統計調査としても、ユニークなものとなっています。ただし、この調査データが、必ずしも海外の沖縄系の人びとの意識の総体を示しているわけではないことには留意が必要です。
分析では、沖縄アイデンティティの持続と変容について、海外・県内参加者を比べ、またハワイ・北米・中南米を比較して、それぞれの特徴を考察しました。2022 年において海外・県内参加者に共通していたのは、沖縄アイデンティティを構成する要素において、実践や実体験が後退し、「自分をウチナーンチュだと思っている」などの意識が圧倒的優位となったことです。このことから、沖縄アイデンティティは、客観性よりも主観性に大きく傾いてきたと言えるでしょう。
その中で「祖先のルーツ」は、きわめて優勢でありつづけていますが、「祖先」がアイデンティティの拠り所となり、きわめて重要な象徴となってきたことは、客観性に支えられつつ、すぐれて主観的でもあります。2022 年データから見えてくるものは、「意識と象徴の沖縄アイデンティティ」なのです。
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