産業開発にみる日本型協力 ―翻訳的適応の視点から―
JICA緒方研究所について
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「日本型」協力は、日本らしい国際貢献という文脈で頻繁に使われてきましたが、その意味するところは多様で、単一の定義はありません。本稿は、日本らしい開発思想やアプローチが明確に現れている産業開発に焦点をあて、「日本型」協力の特徴を考察するものです。
日本は、キャッチアップ過程で外国の知識を吸収し、「開発を学ぶ」ことに独自の視点を培ってきました。また、こうした視点は日本の開発協力を通じた「開発を伝える」取り組みにも色濃く反映されています。
本稿ではまず、開発経済学、国際開発協力、知識創造理論の文献において、産業開発に関係づけて「日本型」がどのように論じられてきたかをレビューします。その上で、「開発を学ぶ、伝える」取り組みとして日本が自らの経験をもとに開発途上国や国際社会に積極的に発信すべき視点として、「翻訳的適応」(translative adaptation)を提示し、日本の産業開発協力の事例を考察します。最後に、国際開発環境の変化もふまえて、知的協力の高度化に向けた提言と課題を示します。
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