アマゾンと樺太を往来する記憶──猪股正が残した回想録
JICA緒方研究所について
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本稿では、猪股正(1921~1998年)という樺太生まれ北海道育ちのアマゾン移民が書き残した回想録「アマゾン川の流と共に」を手掛かりに、樺太とアマゾン中流地域をつなぐ一人の移民の移動の軌跡と記憶を論じています。猪股正が晩年に書き残したこの手記では、アマゾンと樺太の記憶が絶えず行き来しながら交錯していることが特徴的です。この手記に残された移動、入植と開拓の記録の一部をたどることから、樺太という帝国日本の植民地とアマゾンの入植地とをつなぐ移民の経験と記憶が浮き彫りになります。これを通して、帝国日本とアマゾンを結びつけた移民の越境的移動や入植・開拓の実態とその連続性の在り方を考察するための視点を提案します。
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