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No.17 Legitimacy-driven organisations: How can we manage them for better results?

  • #ポリシー・ノート
  • 「組織」の性質や行動を理解し、効果的・効率的にそれを管理するために組織論は有益である。その一つに新制度派組織論がある。これによれば、先進国の開発協力機関であろうが被援助国のカウンターパート機関であろうが、組織というものは、それが属する社会が求める法律、規範、認知的信念に対して「正しい」姿を見せられなければ存続することができない。したがって組織は社会の中で生き延びるため、どう事業を行うかよりも、どう社会から見られるかにより注意を払いがちだという。開発協力の実務者は、こうした組織の非合理性を意識して事業を行うのが賢明である。
  • 往々にして開発協力機関は、自身の規則やガイドラインを受け入れるよう被援助国の組織に求めがちである。しかし、援助を受ける組織がこうした要求に応じることは自身のルールや手続きに違反し、自国内において「正しくない」姿を見せることになりかねない。こうしたリスクを回避するため、援助の受け手は形式的あるいは表面的に規則やガイドラインを受け入れざるを得ない場合がある。開発協力の実務者は、被援助国の組織が置かれた状況を理解しないまま安易にこうした行為を非難すべきではない。
  • ベストプラクティスやグッドプラクティスの「形」を開発途上国の組織に移転することは比較的容易だ。しかし、その根底にある「意味」は、受け入れ国の文化や規範の影響を強く受けるため、そのまま移転することは難しい。むしろ現地の文脈に合うよう変えることで開発途上国組織に受け入れられるとも考えられる。開発協力の実務者は、技術移転を試みる際にこうした変化を許容すべきである。
  • 開発協力機関にとって、ログフレームは、技術協力プロジェクトの実施監理のみならず、自国内で説明責任を果たすためにも必要である。しかし、プロジェクトにおいて想定外の事態に直面した場合、ログフレームにある活動に固執しているとうまくいかない。ログフレームは修正可能だが時間がかかる。こうした状況では、ログフレームにある活動と現場での実際の活動を切り離す(デカップリング)ことで、開発協力機関は対外的に正当性を維持しつつ現場でのニーズに応えることができる。
  • 開発協力機関の在外事務所は受け入れ国で存在し続けるため、そこでの法律・規範・認知的信念に対して「正しい」姿を見せなければならない。同時に、自身が属する開発協力機関で生き残るため、そこでも「正しい」姿を見せる必要がある。在外事務所の中でも地域事務所は状況が複雑で、自国の親組織と受け入れ国、そして周囲の担当国それぞれにおいて存続するため、それぞれに期待される姿を見せなければならない。このような重層化する要求に対処するため、地域事務所は担当国に現地駐在員を配置し、出先組織をつくり、それぞれの国において個別に「正しい」姿を見せる必要がある。
著者
伏見 勝利
発行年月
2025年12月
ページ
7ページ
開発課題
  • #政治・ガバナンス
研究領域
開発協力戦略
研究プロジェクト