No.57 A Tale of Two Crises: Indonesia's Political Economy

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2008 年のグローバル経済危機は多くの国々に経済的打撃をもたらした。インドネシアも明らかにこの危機から影響を受けており、輸出の成長は著しく減退した。しかし、インドネシア経済に対する危機の衝撃は、シンガポール、マレーシア、タイなど同じ地域内の他の国々と比べると、限定的であった。この状況は、なぜそうだったのかという疑問を浮かび上がらせる。ただし、この危機はインドネシアにとって初めての金融危機というわけではなく、すでに 1998 年のアジア金融危機で同国は非常に深刻な影響を受けていたのである。そうするとむしろ興味深い論点は、2008 年のグローバル金融危機は、規模自体は 1998 年よりもはるかに大きかったにもかかわらず、なぜその効果は相対的に限定されたものであったのか、という問題である。本論文は 1998 年と 2008 年の危機には少なくとも四つの違い—危機の起源、為替相場制、政策的対応、全体的な政治経済状況—があったと論じる。さらに、貿易構造が 2008 年危機の際には重要な役割を果たしたことも指摘する。インドネシアがこのグローバル金融危機を乗り切ったのは、良い政策と好運という二つの要因のおかげである。本論文は、そうした全ての要因を取り上げるが、とくに二つの危機の間の国内政治経済の役割に焦点を当てる。そして、結論では、インドネシア経済の将来について過度に楽観的な見通しを立てることにならないよう、今後数年間にインドネシアが取り組まなければならない幾つかの主要な課題について評価を行う。

著者
Muhammad Chatib Basri
発行年月
2013年3月
関連地域
  • #アジア
開発課題
  • #経済政策
研究領域
経済成長と貧困削減
研究プロジェクト